先週1週間、取材で米国西海岸・サンディエゴを訪れた。取材の目的は、大手携帯電話サプライヤーである米QUALCOMM(クアルコム)の最新技術デモンストレーションと、同社が主催する「BREW 2007 Developers Conference」の視察だ(6月22日の記事参照)。また、北米で始まったモバイル向け放送「MediaFLO」の商用サービスを試す目的もあった(2006年3月の記事参照)。最新技術デモンストレーションとBREW 2007 Developers Conferenceの詳細は、兄弟サイトであるITmedia +D Mobileに掲載されている一連のレポート記事に譲る。
今回のQUALCOMM取材は、見るもの・得るものが非常に多かったが、その中でも印象深かったのがBREW 2007 Developers Conferenceで垣間見られた「GPS携帯電話カーナビゲーション」に対する期待感だ。
まず、QUALCOMMが毎年行う「BREW Developer Award」では、日本のナビタイムジャパンとKDDIが協業する「EZ助手席ナビ」が部門賞を獲得した。BREW Developer Awardとは、商用のBREWアプリケーションを開発するベンダーや開発者の中から、優秀なアプリケーションを開発した者に贈られる賞である。ナビタイムジャパンがBREW Developer Awardを受賞したのは今回で5回目。2002年以降連続して受賞しており、これは世界初の快挙だという。
EZ助手席ナビが獲得したのは、新たに登場したサービスの中から選ばれる「BREW Award Best Up and Coming Application」という部門賞。今回の受賞では、EZ助手席ナビの高精度なナビゲーションと高い表現能力、検索機能の豊富さが評価されており、自分の車の燃費管理やCO2排出量の計算が可能な「ecoマネージャー」の搭載など付加価値機能の充実なども今回の受賞のポイントになった。日本のGPS携帯電話向けカーナビゲーションサービスが、北米で注目・評価されたのは興味深い。
なお、ナビタイムジャパンはロケーションビジネス全般から選出される「Best Location-Based Service Application」部門でも最終選考まで残ったが、惜しくも2部門制覇は逃した。
一方、EZ助手席ナビ以外では、北米の大手PND※メーカーであるGARMINが、GPS携帯電話向けサービスを出展していた。GARMINはオランダのTomTomと並ぶPNDメーカーであり、世界各国に製品を展開するこの分野の老舗だ。
GARMINのGPS携帯カーナビは、PND版のGARMINとほぼ同じ機能とUIを実現している。PNDはもともと液晶サイズが小さく、その限られた画面の中で分かりやすいナビゲーションができるように工夫されているので、携帯電話版も窮屈な印象を受けない。さらにGPS携帯電話ならではの機能として、通信経由でリアルタイム渋滞情報や天気情報がダウンロードできるようになっていた。
今回のBREW 2007 Developers Conferenceは、QUALCOMM社のソフトウェアプラットフォームであるBREWを採用するベンダー向けのイベントであるため、そこで見られたのはBREW版のGPS携帯カーナビに限られた。しかし、欧米市場全体を見渡しても、SymbianOSやWindows Mobile、Palm Treoなど他の携帯電話プラットフォーム向けのGPS携帯カーナビサービスが続々と登場しており、PND市場とともに急成長し始めてきた。NokiaやPalmなど携帯電話メーカーの中でも投資優先度が高くなってきている。
GPS携帯電話向けの歩行者ナビゲーションやカーナビゲーション分野は、日本のデバイスメーカーやソフトウェアベンダーの存在感が強い分野でもある。例えば前出のナビタイム・ジャパンは、公式に海外進出を表明し、欧米でこの分野の主力端末となるスマートフォン向けサービスの拡大に力を入れ始めている。今後が注目の分野と言えるだろう。
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