7月4日、本田技研工業が純正カーナビ向けテレマティクス「インターナビ・プレミアムクラブ」の新機能を公開した。今秋発売予定の新型フィットから搭載する予定だ(7月4日の記事参照)。
インターナビ・プレミアムクラブは、同社が1998年から開始したカーナビ向け情報サービスで、2002年から本格展開をしているものだ。当初から“情報サービスによるドライバー支援”を基本コンセプトとしており、特に多くのカーナビが対応する「VICS(Vehicle Information and Communication System : リアルタイム渋滞情報システム)」を超える独自の渋滞情報収集・予測・回避システムの充実でリードしている。そのサービス内容や顧客満足度の高さでは、同様にテレマティクスサービスに力を注ぐトヨタ自動車と並んで、この分野を牽引している。
今回のインターナビで新機能の柱になったのが、世界初の「主要道リアルタイム地図更新」機能だ。これはカーナビが使用するデジタル地図を多層化し、部分的な書き直し(差分更新)を可能にしたもの。これにより、開通したばかりの新規路線でも、新たな地図をインターナビセンターからダウンロードすることで「開通から数分以内に新たな地図を使ったナビゲーションが可能になる」(本田技研工業)という。
「今回のリアルタイム地図更新の実現では、デジタル地図の仕様から根本的に作り直しました。それにより携帯電話通信経由でやりとりするサイズを最小限に抑えて、更新にかかる処理時間も短くできた」(本田技研工業インターナビ推進室の今井武室長)
ホンダが採用した新たな地図は、本田技研工業とゼンリン、アルパインが共同開発したもので「MBAフォーマット」と名付けられた。今後ホンダが投入するカーナビは、順次この地図に切り替わる予定だ。
カーナビの地図を部分的に書き直して、「古くならない地図」を作る。この取り組みは、すでにトヨタも開始している。
トヨタ自動車はトヨタマップマスターと共同で、5月から地図更新サービス「マップオンデマンド」を開始。新型プレミオ/アリオンや、新型ノア/ヴォクシーが採用するテレマティクス「G-BOOK mX」で導入されている(4月11日の記事参照)。
トヨタの「マップオンデマンド」もデジタル地図の一部分だけを通信経由で書き直す差分更新機能を持っているが、ホンダの「主要道リアルタイム更新」との違いは、新地図への更新タイミングだ。ホンダは新路線開通から数分以内に地図が書き換わるが、トヨタでは「開通後最短7日間以内」となっている。例えば、先月23日に開通した圏央道あきる野-八王子区間などは、開通後10日以上たった現在もマップオンデマンド上で更新されていないなど地図更新のタイミングが一定ではない。
このように“どこまでリアルタイム性にこだわるか”の違いはあるが、トヨタとホンダがともに「古くならない地図」の普及に力を入れていくのは間違いない。その背景には、今後、登場するクルマの安全情報支援で、カーナビのデジタル地図連係機能が増えていくという理由がある。今回のインターナビ・プレミアムクラブでも、カーナビ地図と天候情報を連携させた「インターナビ・ウェザー」という安全運転支援機能が用意されている。今後はサーバー上の情報だけでなく、「デジタル地図と、クルマのECU(Electric Control Unit : 総合車両制御コンピューター)との連携も視野に入ってくる」(今井氏)。
利便性だけでなく、安全上の理由からも自動車メーカーは「古くならない地図」の普及に力を入れる。むろん、それを実現するには、地図の差分更新技術と、地図を配信するためのサーバー連携機能が欠かせない。地域市場による市場投入や普及の時間差はあるだろうが、“ネットに繋がり、サーバー連携するクルマ”の世界は、着々と近づいてきている。
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