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» 2007年09月12日 09時38分 公開

神尾寿の時事日想・特別編: :おサイフケータイで観光振興――「まつやまインフォメーション」

取材のために訪れた松山市内で、ちょっと変わった物体を見かけた。緑色のポストのようなそれにはFeliCaリーダー/ライターが付いており、おサイフケータイを利用して観光情報を配信するという。

[神尾寿,Business Media 誠]

 先週、全日空の「松山空港におけるSKIPサービス移行開始」と(9月4日の記事参照)、伊予鉄道の「ICい〜カード」の導入3年目の様子(9月11日の記事参照)を取材するため、愛媛県松山市を訪れた。同地での取材はこの2つが目的だったのだが、松山の街を歩いていたら、ケータイを使った面白い観光振興への取り組みを見つけた。今日の時事日想は番外編として、この取り組みについてレポートしたい。

 松山市には松山市駅を中心に観光スポットが点在するが、その各所で見かけたのが、緑色のポストのような物体である。3方向に様々なポスターが貼られており、正面には映像コンテンツを流すディスプレイ、側面には電光掲示板がある。さらに、よく見ると正面部分にはICカードとおサイフケータイ用のリーダー/ライターも設置されていた。

 この物体は「まつやまインフォメーション」という名前で、坊ちゃん列車の車掌をイメージしたデザインで、松山の案内人という設定になっている。松山市が観光振興施策として2006年12月に設置したもので、松山市駅以外にも市内13カ所に置かれている。ポスターなどの広告掲載スペースは民間企業にも開放されている。

松山市内13ヶ所にある「まつやまインフォメーション」。松山の案内人という設定で、天頂部に帽子のデザインが施されており、坊ちゃん列車の車掌のイメージだ。三面にポスター掲示スペースが、側面には電光掲示板がある

おサイフケータイをかざして、観光情報を取得

 まつやまインフォメーションの正面にあるICカードとおサイフケータイのリーダー/ライターは、松山のタウン情報を提供するために用意されている。

 ICカードの利用は登録制になっており、「まつやまインフォメーションカード」という専用のものを使う。リーダー/ライターの刻印を見たところ、日立のμチップカードを使っているようだ。松山市によると、「まつやまインフォメーションカード」を利用するには、市内で配布されている「まつやまインフォメーション携帯電話メールサービス」の申込書に書かれた手順で携帯メールアドレスを登録する。その後、まつやまインフォメーションカードをリーダー/ライターにかざすと、そのリーダー/ライターの設置された場所周辺の観光情報が携帯メールで送られてくるという。詳しいシステム内容については不明だが、仕組みとしてはSuiPoに近いようだ(5月1日の記事参照)

正面にあるICカード/おサイフケータイのリーダー/ライター。ICカードはμチップを使う専用タイプ。おサイフケータイ用はFeliCaだ

 一方、おサイフケータイの利用はもっと簡単で、まつやまインフォメーションのリーダー/ライターに、ケータイをかざすだけだ。すると、松山の観光情報を集めたポータルサイト「MATSUYAMA ハイクナビ」のURLが送られてくる。このポータルサイトでは、おサイフケータイをかざした場所周辺の観光スポットや飲食店など店舗情報はもちろん、電車・バスの時刻表検索や天気情報などが調べられる。伊予鉄道のリアルタイム運行情報「いつくる」にもリンクしており、電車・バスが“あとどれくらいで到着するか”もわかる。まだ実証実験の段階だが、コンテンツやサービスはかなり充実していた。

MATSUYAMA ハイクナビの概要

おサイフケータイをかざすとURLが送られてきて、観光ポータル「MATSUYAMA ハイクナビ」に接続する。まつやまインフォメーションの設置箇所情報に応じて、観光スポットや飲食店の情報は変わる

地方の観光振興におけるFeliCa活用

 この「まつやまインフォメーション」タウンボード関連のコンテンツ・サービスは、松山市の「松山まちめぐりナビプロジェクト実証実験事業」に位置付けられており、市・国・民間企業が負担金を拠出する形で運営されている。その中で、おサイフケータイ活用が試みられている格好だ。

 地方の観光振興におけるおサイフケータイ活用の試みとしては、今年2月、宮崎県でもソニーの「FeliCaポケット」を使った地域観光スタンプラリー「CHORUCA」の実証実験が行われている(3月12日の記事参照)。この取り組みでは、FeliCaを使ったCHORUCAカードもしくはおサイフケータイを使い、観光スポットのスタンプラリーやポイントプログラムを実現していた。また、小田急箱根ホールディングスがこの8月から運営している「箱根かざしてゲット!」も、おサイフケータイを活用した観光情報配信の試みの1つだ(8月13日の記事参照)

 FeliCa関連機器はすでに普及期に入っているため導入コストが安く、決済を連携させなければ運用の負担も少ない。一方で、電子的なシステムなので、応用性や拡張性が高い。おサイフケータイの利用を前提にすれば、通信サービスと連携した展開も考えられる。観光振興におけるFeliCa活用は、アイデア次第でコストパフォーマンスの高いものが作れそうだ。

 地方における観光振興は、その経済の中でも重要な役割を占める。宮崎、松山のような「観光振興でのFeliCa&おサイフケータイ活用」は、今後さらに増えそうである。

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