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» 2007年10月11日 02時51分 公開

保田隆明の時事日想: :有楽町イトシア、明日オープン――東京の“東側”が盛り上がる理由とは?

丸の内、銀座、汐留といった、東京の東側の活性化が著しい昨今。10月12日、有楽町に新しい商業施設が誕生する。メインテナントとして入居するのは、銀座エリア初進出となる丸井だ。

[保田隆明,Business Media 誠]

著者プロフィール:《保田隆明》

やわらか系エコノミスト。外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「投資事業組合とは何か」「なぜ株式投資はもうからないのか」「株式市場とM&A」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 10月12日、有楽町に新しいショッピング施設である「有楽町イトシア」がオープンする。有楽町駅の目の前の立地で、メインテナントとして丸井が入居する。丸井は10代、20代前半の若い世代をターゲットとして、渋谷、新宿を中心に店舗展開をしているが、有楽町店では、20代、30代前半をターゲットとし、品揃えも他の丸井店舗とは異なるという。

有楽町イトシア。「ITOCiA」とは、「愛しい+ia(場所を表す名詞語尾)」から作られた愛称だそう

イトシアがオープン――なぜ丸井が有楽町に?

 丸井にとって、有楽町に出店しないといけない事情は2つあると筆者は考えている。1つは、10代、20代前半という若い世代がお金を使わなくなっているので、この層だけをターゲットにしていると収益基盤に不安を覚えること。そしてもう1つは、東京の街別にみる経済力の変化である。

 最近の東京を一言で表すと“西低東高”の状態だ。かつて圧倒的な人気を集めた渋谷、新宿、池袋という東京の西側地域の経済力が低下している一方、丸の内、有楽町、銀座、汐留という東側地域の経済力が上昇していることである。これはひとえに、それら東側地域が20代、30代というお金を使う世代に支持されていることに起因する。

オフィスと商業施設の並存による空洞化時間の回避

 東側地域の経済力上昇の背景としては、過去数年間でそのエリアでのオフィスビルの建設が相次ぎ、働く人口が増加したという点が挙げられる。また、オフィスビルのみならず、汐留や丸の内に見られるように、オフィスと商業施設が一体化したビルが数多く建設されたことで、街全体として夜と週末の空洞化を避けることができるようになった点が大きい。新宿にも多数のオフィスビルが存在するが、それらはあくまでオフィスビルであり、商業施設としての魅力は薄い。これが夜と週末の西低東高に拍車をかけることとなっている。

街の魅力を高めるのは高層ビルだけではない

 銀座地区では高層ビルを建てることができない。一時、松坂屋が超高層化してリニューアルを図ろうとしたが、近隣の反対運動に遭い断念した経緯がある。街の再開発には不可欠に思われる高層ビルであるが、むしろこの高層ビルが建てられないことが銀座地区の経済力の向上には役立っている。それは、1つの建物に集約できる商業施設には限りがあるため、自ずと買い物客は近隣の商業施設を回遊するようになる。この買い物客が回遊することこそ、銀座、有楽町地域の経済力が全体として向上することにつながっている。大手町、丸の内地域と有楽町、銀座地域が地下道でつながるなどの動きも、この回遊の流れを促進するものである。

 また、世界中の大都市を見回してみると、魅力ある街にはふさわしい高級ホテルが存在するが、東側地域はこのホテルのオープンラッシュという点でも街の活性化につながった。

銀座の繁栄はいつまで続くのか

 渋谷、新宿、池袋では、これら3つの地域を結ぶ地下鉄の新路線を建設中である。これが開通すると少しは人の流れが戻ってくると思われるが、渋谷駅前地区以外ではめぼしい再開発の動きがない。その渋谷の再開発も高層ビルを基本とするもので、人の回遊という点ではどこまでの効果があるか、疑問である。

 高層ビルを基点とする再開発の先例といえば六本木が頭に浮かぶが、その六本木でも六本木ヒルズと東京ミッドタウン間をシャトルバスが走り、人々の回遊を意識し始めている。また六本木は昼間の時間帯が空洞化していた街であったが、うまくオフィス人口を取り込むこと、さらには高級住宅棟をオフィスに併設することで新たな住民の確保をも行った。

 渋谷、新宿、池袋という西側地域が、回遊、オフィス、住民の3つを取り込むような戦略的に再開発を行わない限りは、東側地域の繁栄はしばらくの間は続くものと思われる。

 日本では街の再開発に関して、街づくりのビジョンが欠けていることが多い。しかし丸の内から汐留にかけての東側地域の魅力向上は、結果論ではあるかもしれないが、今後の都市再開発の大きな参考になるのではないだろうか。

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