メタボ退治で家計を節約のススメキャスター・目黒陽子の「今、これが気になる」

» 2007年11月19日 17時43分 公開
[目黒陽子,Business Media 誠]

著者プロフィール:目黒陽子

フリーアナウンサー(ライムライト所属)。大和証券SMBCを経て、資格ファイナンシャルプランナーを取得後、キャスターへ転向。NHK総合「お元気ですか日本列島」、「BSニュース」、日本テレビ系列「ウェークアップ!ぷらす」などを担当し、政治・経済など、情報を伝えることの大切さと難しさを学ぶ。同じくアナウンサーの滝川クリステルは従姉妹にあたる。ブログ:http://www.fpcaster.com/


 下着メーカーのワコールは、履いて歩くと運動量が増え、お腹やお尻の引き締め効果が期待できる男性向け下着「エクサウォーカー」を発表しました。メタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)に注目が集まる中、体形を意識する男性が急増しています。男性下着のシェア1%のワコールですが、こうした男性をターゲットに、女性用下着のノウハウを生かした新たな下着を販売しようという狙いです。

ワコールのエクサウォーカー

 コンビニでは“脂肪を分解してくれる”といううたい文句の健康茶などが、ビジネスパーソンに売れているようです。男性だってこれからは美脚・美尻を意識する時代でしょうか? そういえば元プロ野球選手の新庄剛志さんも、かっこいいパンツのCMに登場していましたね。しかし、見た目だけの問題ではなく、もう1つ見逃すわけにはいかない理由がありました。

ダイエットは家計節約術の1つ?

 最新の国民健康・栄養調査結果によると、日本人の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリック症候群と言われています。特に40代・50代の男性と30代の女性に急増中というのです。ランチ後にコンビニでお菓子を購入、会社帰りの1杯……心当たりがある人も多いのではないでしょうか。家計から見ると、毎日の無駄使いであることに加えて、将来的にもっと大変なことになるのです。

 特に男性は、太ることによって高い確率で医療費が大幅に上がります。平均体重より約20キロオーバーすれば、平均体重の人に比べ糖尿病になれば2.5倍、高血圧症で1.3倍に医療費が膨らむことが、京都大学の研究チームによって明らかになりました(参照リンク)。つまりダイエット&メタボ予防をすることは、健康のためだけではなく、医療費の節約にもつながるということです。家計という経済面から見ても気になる情報なはず。

 そしてファイナンシャルプランナーの私も興味を持って調べました。メタボリック症候群を放置すれば、将来、生活習慣病や心筋梗塞、脳卒中のリスクが高まるといわれており、早期の予防・改善で済ますことができれば治療費節約にもなる。要するにダイエットは、家計の節約術の1つだったんですね。(女性のダイエットはエステに通ってお金がかかるイメージですけど、そういう意味ではなくて……)

2008年4月から「特定健診・特定保健指導」がスタート

 2008年4月には、いよいよ全国一斉に新たな健診制度がスタートします。「特定健診・特定保健指導」と呼ばれるこの制度は、40歳以上75歳未満の全員に健康診断を義務化するもの。メタボリック症候群なのかそれとも予備軍なのか、それによってどう生活をしていくことが望ましいのかなど、さまざまなアドバイスをもらうことができますよ。

 特定健診は、現行の健診の項目に「腹囲測定」が加わるのが特徴です。今までは、メタボリック症候群か予備軍と診断されると、「要精密検査」と通知されるだけでした。でも4月からは保健師や管理栄養士らから、食事や運動の指導を受けるなど、生活習慣の改善指導が企業の健保組合などに義務付けられるようになります。血液検査も、導入する機械によってはその場で結果が出ることもあるようです。指導は、「動機づけ支援」と「積極的支援」の2種類。前者は予備軍で、面接は1回ですが、後者はメタボリック症候群の人が対象で、初回面接の後、電話やメールなどで3〜6カ月間、継続的に指導します。

 “隠れメタボ”の方も多いようですから、早めに診断を受けておいた方が安心ですよね。各方面で準備が着々と進められているようです。以前は大型検査装置がある大型病院などでしか、メタボ検査はできませんでした。しかし現在では卓上型の小型装置が開発され、保健所や企業内診療所でもメタボリック症候群のチェックができるようになりました。

尼崎市のメタボ対策

 こうした動きに先駆けてメタボ対策に取り組んできたのが兵庫県の尼崎市です。尼崎市と言えば、環境良好というよりはむしろ「工業都市」のイメージ。実際、65歳未満の死亡割合も高かったようです。しかし2000年からメタボリック症候群に着目、健康診断と保健指導を開始し、全国に呼びかけを始めたのです。

 尼崎市の白井文市長は公務がお忙しく、お弁当で夕食を済ませ、夜は会議という日々を送っています。また役所の方も、夜食にカップラーメンといった生活。若い職員までもが突然の心疾患・ガンなどで亡くなるケースが相次ぎ、「これはなんとかしなくては」と思われたそうです。そして厚生労働省に駆け寄って、予算交渉をするなど積極的に取り組みました。

 尼崎市職員健康保険組合では、2000年から現職死亡ゼロと医療費縮減を目指して「尼崎市職員健康推進戦略」を立ち上げています。健康診断でメタボリック症候群と診断された人に対しては、個別に指導することで成果を挙げています。健康を害すれば、仕事にも家庭・家計にも影響してしまいますからね。予防は医療費などさまざまな面で効果的だといいます。

 尼崎市の健診は、単に流れ作業ではありません。個別の指導を通して本人の意識を変えるように持っていくのが特徴です。その結果、現職者の死亡もなくなり、市役所全体の意識も変ったようです。これが市民を対象とした健診や保健指導へとつながっています。

メタボ関連は市場拡大

 生活習慣病を事前に防ぐことができれば経済的に助かるのは、家計だけではありません。メタボ症候群とその予備軍に健康・生活指導を行うことによって、生活習慣病を予防し、将来の医療費増大を抑制することが期待されています。

 40歳〜74歳の医療保険加入者は、約5600万人います。そのうち約7割が1万円の健康診断を受ければ、市場規模は4000億円ほどになります。このほか食品や下着メーカーなどの効果を合わせると、今後メタボ関連市場は、あっという間に1兆円規模になるかもしれませんね。

 国全体でみれば、機械の導入や制度改革など含め、これが本当に医療費の削減になるのかは賛否両論あるところ。でも個人の生活上では、健康面と家計面でプラスになるといえるのではないでしょうか。

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