インタビュー
» 2007年12月12日 09時07分 UPDATE

EC最前線インタビュー: 昨日上場! ZOZOの2つの強さとは――スタートトゥデイ・前原正宏氏

ファッションブランドが集まる、インターネット上の仮想的な“街”というコンセプトを打ち出し、他のアパレル系ECサイトとは一線を画すZOZO。ZOZOはなぜ、ファッション感度が高い、若いユーザーを惹き付けるのだろうか?

[吉田卓司,Business Media 誠]

 “インターネットでモノを売る”ECサイト。ECコンサルティングを行う吉田卓司氏が、数あるECサイトの中から第一線で活躍しているサイトをピックアップし、「最新ではなく最前線」をコンセプトに、現場の目線で「ECの今」を語ってもらう対談企画だ。

 本連載の第5回目に登場するのは、昨日(2007年12月11日)、東証マザーズに上場したばかりのスタートトゥデイである。千葉県の幕張に本社を構えるスタートトゥデイは、ファッション・ライフスタイルを提案するサイト「ZOZO RESORT」(ゾゾリゾート)を展開している。今回はスタートトゥデイ取締役、マーケティング本部本部長の前原正宏氏との対談をお送りする。

ay_zozo01.jpg ZOZO RESORT

ファッション感度が高い人が集まる、インターネット上の仮想の街“ZOZOTOWN”

 突然だが、あなたは「ZOZOTOWN」(ゾゾタウン)というECサイトをご存じだろうか。

 ZOZOTOWNは、今、もっとも勢いのあるアパレルECサイトの1つだ。UNITED ARROWSやBEAMS、吉田カバンなどの人気ブランドや、ストリート系のコアなファンを持つブランドを中心に、680ものブランドと91のショップを擁し、扱う商品点数は約2万点。会員数は60万人以上と、ファッション感度が高い若者を中心に圧倒的な支持を集めている(9月末数字)。

 ZOZOTOWNにアクセスしてみると分かるが、“TOWN”の名の通り、たくさんのファッションブランドが集まる、インターネット上の仮想的な“街”になっていることがZOZOTOWNの面白さ。スタートトゥデイ自身もZOZOTOWNをECサイトとは呼ばず、ファッションブランドが集まった仮想的な街として打ち出している。また最近では「ZOZORESIDENCE」というSNSサービスの提供も始めた。

 ZOZO TOWNがスタートした2000年ごろ、「アパレル衣料品はインターネットでは売れない」というのが定説だった。“服を試着せずに購入する”というのは、2000年当初では考えられないことだったためだ。しかし創業から7年がたち、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイは12月11日に東証マザーズに上場。スタートトゥデイはZOZOTOWNによって、インターネットでアパレル衣料品が売れることを証明したと言えるだろう。

 現在スタートトゥデイはECサイト(ZOZOTOWN)だけでなく、「ZOZONAVI」「ZOZOWALKER」「ZOZOARIGATO」など、ECではないユニークなサービスも各種展開。これらのサービスを束ねる形で、高感度なファッションやライフスタイルを提案する総合サイト「ZOZORESORT」を運営している。

ay_zozo08.jpgay_zozo03.jpg ECサイト「ZOZO TOWN」(左)と、リアルショップを検索できる「ZOZO NAVI」(右)
ay_zozo04.jpgay_zozo05.jpg 世界中に“ありがとう”を発信しようというコンセプトのコミュニティサービス「ZOZO ARIGATO」(左)。ファッション関係者やアーティストなどのブログを閲覧できる「ZOZO WALKER」。ブロガーはZOZOTOWNを訪れた人という設定で、街の中を自由に歩き回る(右)

スタートはCD・レコードのカタログ通販だった

ay_zozo02.jpg スタートトゥデイ取締役、マーケティング本部本部長の前原正宏氏

吉田 ZOZO TOWNは2000年創業ですよね。創業当初からアパレルを販売されていたのですか?

前原 もともとは、弊社代表が自宅でCD、レコードのカタログ通販を行っていました。それをオンライン化しようと2000年にサイトを立ち上げたのが初めです。

吉田 CDのオンラインショップがどうしてアパレルを手がけることになったんですか?

前原 CDを買っている人に向けて洋服も提案したら売れるのでは? とスタートしました。ライブに行けば洋服を着ていますから、(CDを買うファンが)どんなものを着ているか分かりますよね。

吉田 どんな商品をどうやって仕入れていたのでしょう。

前原 代表が昔バンドをやっていたので、その知り合いがいるブランドさんからまず仕入れを始めました。裏原(宿)系とかストリート系が多かったですね。

吉田 2000年ごろのECというと、洋服もですが食品も、ネットで買うなんて全く一般的ではありませんでした。オイシックスでもそうでしたが※、最初は商品仕入れには苦労されたのではないですか? アパレル業界の場合も、そもそもインターネットで販売すること自体、メーカーさんに理解されにくそうですね。

※吉田氏は、感動食品専門スーパー「Oisix(おいしっくす)」の創業メンバー。

前原 そうですね。当時はインターネットで洋服を売るという考えがなかったので、「そもそも、インターネットとは何か?」という説明からしていましたし、取引が決まるまでは何度もメーカーさんに足を運びました。近所まで来て突然「寄っていいですか?」という飛び込み営業のようなこともやっていました。本当に大変でしたね。メーカーさんと会う約束が取れても、インターネット(販売)ということは最後の最後に説明していました。「(店舗は)どこで販売していますか?」と聞かれても「千葉でやってます」とだけ答えたりとか(笑)。

カッコよくないと、商品を卸してもらえない

吉田 アパレルでもやっぱりそうなのですね。私もオイシックスでは、まず農家さんに理解してもらうのが大変でした。他にアパレル特有の事情みたいなものはありますか?

前原 ブランドのメーカーさんは、全国の都道府県にある店舗を外観、内装、など全てを見て卸すことを決めるんです。それが分かったので、サイトもきちんとカッコよく作っていました。

吉田 なるほど、それでこんな素敵なサイトなのですね。創業から会社が大きくなるとき、何が転機になったのですか?

前原 強いて言えば、2004年12月に「ZOZOTOWN」になった時ですね。それ以前は、自社17店舗それぞれが独自のURLを持ってショップを運営していたんですが(編注:1ショップが10〜20ブランドを取り扱っていた)、ZOZOTOWNになった時に(統一のURLになるとともに)250ブランドまで増えました。この時に初めて(プレス)リリースを出して、取材もこれ以降受けるようになり、その後認知が増えたと思います。

ay_zozo07.jpg

社員のセンスをどう磨く?

吉田 UNITED ARROWSとの取引が転機だとよく取り上げられていますよね?

前原 ZOZOTOWNになった時に入ってもらったのですが、うちのスタッフの奥さんがたまたまUNITED ARROWSで働いていて、重松(理)会長とランチに行ったときに「ZOZOTOWNというのがあるよ」という話になったため、(ZOZOTOWNの存在が)重松会長まで届いたと聞いています。そしてある日、重松会長がふらりと1人でやってきて、代表と話をして「うちなら任せられる」ということになり、取引が決まったんです。

吉田 一人でふらっと来た? どんな話をしたんですか。

前原 詳しくは聞いていないですが、時計の話をしたと言っていました。

吉田 あはは! ぜんぜん関係ないし(笑)。恐らく言葉じゃなく、このオフィスを見て、おしゃれなセンスの会社だと分かったからなんでしょうね。こんなデザインのオフィス、見たことないですから。しかも応接室に入ったら、カフェのメニューのような飲み物のリストを渡されて驚きました。

前原 うちでは、会社のデザイナー自身がアパレルのデザイナーに負けないようなデザインを社内スタッフに提供しています。サイトデザインだけでなく、社内ツールのデザインも担当しているんです。名刺などもそうですし、先ほどの飲み物のメニューも社内のデザイナーが作ったものです。

ay_zozo06.jpg 来客用のメニュー(左)を始め、社内報、部署ごとのデザインステッカーなどすべて社内デザイナーのデザインしたもの

吉田 本当にすべておしゃれですよね。こういう環境から、こういうおしゃれなホームページができるんですね。

前原 取引会社からも“おまえんとこ、いちいちかっこいいよな”と言われたりしています(笑)。

吉田 あはは! 確かに“いちいちかっこいい”ですよ。私は、このセンスのよさがZOZOTOWNの1つの勝因だと思っています。こうしたセンスのよさやニーズの把握はどうされているのですか?

前原 1つは、社員が限りなくユーザー目線に近いという点だと思います。社員が欲しいと思う商品はユーザーも欲しいわけです。また商材は違えど、自分でもネットで買物はするので、そこで良い所をみて、自然と取り入れています。また、ブランドさんの展示会、レセプションなどには参加しています。いろんなデザインを見て、話を聞いて……そういうことで、社員の感性が磨かれるのかなと思います。

吉田 なるほど。「お客様に近い目線でサービスを提供すること」は、商売の基本ですからね。しかしどうやって、ユーザーに目線の近い社員を集めているのですか?

前原 うちの社員は、元々お客様だった人が圧倒的に多いです。実際にZOZOTOWNを利用していた洋服好きのお客様が入社を希望してくれています。

吉田 それは強いですね。お客様であり、社員なわけですね。

前原 そうです。こうした洋服好きの社員が集まっているので、商品の撮影でもいちいち指示をしなくても自分の気になるところは全て撮影してくれます。そして写真のクオリティーも気にしてくれるのです。

吉田 今後の方向性を教えてください。

前原 ショッピングだけではないサイトに移行しようとしています。買うだけ以外の楽しみがあるサイトです。ZOZO“TOWN”(街)ですから。

筆者より一言……ZOZOTOWNの2つの強さ

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いかがでしたか? インタビューをして、私はスタートトゥデイには2つの強さがあると感じました。ZOZOTOWNの“ZOZO”という名称は、想(imagination)と創(creation)を組み合わせたものだそうです。まさにその名のとおり、サイトデザインはもちろん、オフィスから日々使うグッズまで、社員が接するあらゆる細かな部分で“センス”へこだわっている会社であることが印象的です。社員全員がその共通認識を持っていることが、スタートトゥデイの強みの1つであることと思いました。もう1つは、社員がお客様と同じ目線で自然なサービスを提供できていること。これは簡単なようで意外と難しいことです。今後ZOZOTOWNはどんな街になっていくのか。期待したいと思います。

吉田卓司:2000年にオイシックスを創業。代表取締役副社長として感動食品専門スーパー「Oisix(おいしっくす)」を日本でもトップクラスの食品ECサイトに育てた。現在はECコンサルティングを行っている。2007年7月、Oisixでの7年間のEC実業で培ったノウハウをもとに、企業向けに最適なECソリューションを提供する会社「オイシックスECソリューションズ」を設立した(7月23日の記事参照)


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