お金とのつき合い方を見直す第一歩──『ベンジャミン・フランクリン 富を築く100万ドルのアイデア』5分で読むビジネス書

» 2008年01月15日 19時21分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

リン・G. ロビンズ『ベンジャミン・フランクリン 富を築く100万ドルのアイデア』(産能大学出版部刊)

 成功している人は誰でも「自分にとって最も価値のある投資と所有しているものは自分自身である」と信じています。医者は自分の技術と知識のために投資します。医科大学の学費など医者になるまでにかかる費用が、おそらく彼らの人生で一番大きな投資でしょう。投資ということで考えると、成果を期待できる可能性が最も高い投資の一つと言えるでしょう。

 プロのスポーツ選手は毎日のトレーニングと日常の健康管理をすることにより、自分の体に投資をしています。これらの自分自身への投資なくしては、彼らが望んでいるような結果を出すことは不可能なのです。(p.180)


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 本書が刊行されたのは1996年11月。その後10年以上を経た今となっても本書の根底にある考え方はもちろん、紹介されている方法論はいささかも色あせてはいない。

 アメリカ合衆国建国の父の1人であるベンジャミン・フランクリンのお金に関する思想やアイデアを紹介しながら、読者のお金に関する間違った認識を改めるとともに、マネーマネジメントのための具体的な方法論を解説している。

 基本となるのは次の3つのフェーズ。

  1. 優先順位を決める
  2. 自分にフィットした仕組みを作る
  3. 仕組みをスムーズに回し続けるためのツールを活用する

 お金にまつわる状況というのは、人の数だけバラエティーがあるものだが、本書は1人1人の状況に応じて無理なく続けられるような仕組みの作り方を指南する。

 その仕組みを作り始める前にすべきことがある。それは、お金に関する間違った認識を改めること。具体的には以下の7項目を見てほしい。それぞれの「間違った認識」ごとに「繁栄をもたらす考え方」が示されている。

  ×間違った認識 ○繁栄をもたらす考え方
1 収入が増えればお金の問題はすべて解決する 支出が収入を超えないことが金銭的問題解決への道
2 予算は行動を束縛するので人生がつまらないものになる 予算を組み、それにしたがって暮らすことにより、大事な選択にも正しい判断を下せるようになる
3 支出の状況は貯金通帳の残高を見れば分かる 銀行の通帳では予定外の支出を見通すことはできない
4 必要なものは購入する 人は感情で物を買う
5 お金が貯まるまで我慢するよりも、先に手に入れて楽しんだ方が利口だ ローンは将来の選択を狭めてしまう
6 お金そのものに価値がある お金は価値のあるものと交換するためにある
7 私の現在の金銭的状況は、景気や周囲で起こる出来事など、自分でコントロールできないものの影響によるものだ 私の現在の金銭的状況は、今までに下した判断と、お金に関して信じていることの結果である

 これら7つの根底にあるのは、お金を使う優先順位を決めるというポリシーだ。本文でも「お金が意義のある方向に使われるときには、常にその基本に注意深く検討された優先順位が存在している」(p.21)と主張されている通り、お金の問題には主体的かつ意図的に取り組むべし、というわけだ。

 以上が理解できたら、いよいよ仕組み作りだ。用意するものは2つないし3つの銀行口座。これらを使って「収入と支出の流れを意図的に調整し、安定した支出と余裕のある財源を築く」ことを目指す。

 詳細は本書に譲るが、この仕組みに従うことによって次のようなメリットが得られる。

  1. 貯金しようと思わなくても自動的に残高が増えていく
  2. 予定外の支出に対する備えができる
  3. 自由に使えるお金の額が増える
BOOK DATA
タイトル: ベンジャミン・フランクリン 富を築く100万ドルのアイデア
著者: リン・G. ロビンズ著
出版元: 産能大学出版部刊
価格: 1575円
読書環境: ×書斎でじっくり
◎カフェでまったり
△通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 今年はお金とのつき合い方を見直したい、と考えている人。

 本書の後半では、この仕組みをスムーズに回していくためのツール(テンプレート)も紹介されているが、これと合わせて10年前にはあまり一般的ではなかったネットバンキングや手軽に始められる自動積立の仕組みなどを活用することで、より少ない手間で継続することができるだろう。

 昨今、投資に関するさまざまなノウハウ書が出ているが、それらを学ぶ前に本書を手がかりにして、現状のお金とのつき合い方を振り返り、やめるべきこと、改めるべきこと、そして新たに習慣として始めることの3点を決めて実行することをお勧めする。これだけでもかなりの効果が得られるはずだ。習慣を改めることは、成果を期待できる可能性が最も高い自分自身への投資にほかならないからである。

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