京都のステーションは中心部にまとまって配置されており、JRや地下鉄の駅の隣はもちろん、住宅街にも多い。レンタカーのような専用店舗ではなく、そのほとんどが民間駐車場の一部を借りてクルマを置いている。プチレンタではFeliCaカードで認証をし、クルマの管理はセンターと通信して行うテレマティクス型。完全無人化が実現しているので、駐車場さえ確保すればステーション化ができる。
興味深かったのは、住宅街などではかなり近接して複数のステーションがあったことだ。1台ずつ複数の場所に設置するくらいならば、1カ所にまとめた方がよいと思うが、これにも京都ならではの事情がある。
「京都の市街地は狭い路地が多くて、一方通行ばかりなんです。古い建物や文化財もあって道路の拡幅も難しい。ですから、お客様が『今日はどちらの方面に行くか』で、(一方通行に合わせて)進行方向に出やすいステーションを選べるように配置しているのです」
また、1台分ずつだとステーション用の駐車場が確保しやすいという理由もある。カーシェアリングが京都の土地柄に合っているとはいえ、まだ始まったばかりのサービスで、認知度はまだ低い。そのような中で最も苦労しているのが、ステーション用の駐車場確保である。
「駐車場そのものの数が少ないですから、そこからステーション用のスペースを確保するのがとても大変。駐車場オーナーの理解と協力を得るのが難しいのです」
今後は行政の遊休地や公共駐車場の活用なども考えたいとのことだが、後者には別の問題もある。
「実は京都の中心部には、1000台規模の公共駐車場(京都市御池駐車場)があるのですけれど、そこは地下なのでドコモの電波が入らないのです。プチレンタでは車両管理に(NTTドコモの)通信モジュールを使っていますから、電波が入りにくい地下駐車場だとステーションにできない。
このほかにも京都は景観条例が厳しいので、ステーションの位置を示す看板が掲げられません。ですから、ステーションがどこにあるのかアピールしにくいという課題もあります」
このように課題はあるものの、ステーション増加に対する期待は大きい。
「既存のお客様はもちろん、イベントなどで(プチレンタを)知っていただいた方からも『ステーションを増やしてほしい』という声をいただいています。お客様の中には、(家から離れた)ステーションまで自転車を使ってまでプチレンタをお使いいただいている方もいます。ステーションの土地確保を頑張っていかないといけない」
取材中、北山さんがふと「京都人のメンタリティって、フランスの人たちに似ているんじゃないかと思うんです」とつぶやいた。変わることより、守ることを大切にする。良くも悪くも、新しいモノやコトに飛びつかない。しかし、両者の歴史を見ると、“変わるときには大胆に変わる・変える”という特徴もある。
欧州の各都市では、クルマ依存主義という20世紀の古い考えを捨てて、電車や路面電車、レンタル自転車、カーシェアリングなど複合的な公共交通の大胆な利用促進で「21世紀の交通社会」を築きつつある。パリもその1つで、自転車のレンタル/シェアリング事業に続いて、「ヴェリプ」や「オキゴ」などカーシェアリング事業者も増え始めている。もし、日本で大胆に“クルマ依存の街作り”を捨てられるとしたら、それは京都かもしれない。
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