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» 2008年05月14日 16時45分 UPDATE

神尾寿の時事日想:PRADA PhoneとNokia N95に思うこと (2/2)

[神尾寿,Business Media 誠]
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オープンサービスの取り込みで独自の魅力を打ち出す

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 一方、世界最大の携帯電話メーカーであるノキアは、LG電子とは正反対のアプローチで日本市場に臨んでいる。同社は携帯メールなどごく基本的な部分ではキャリアのサービスや仕様にあわせるものの、UIやソフトウェア、コンテンツサービスの部分では、頑なに日本仕様化を拒んでいる。彼らが重きを置くのは、「グローバルな仕様で、オープンなサービスかどうか」(ノキア・ジャパン デバイスGTMシニアマネージャの大塚孝之氏)だ。その代わり、グローバルかつオープンなものであれば、ソフトウェアやサービスを独自開発してでも、使いやすいものをユーザーに提供する。よくも悪くも、“郷に入っても、郷に従わず”がノキアの流儀と見ることができる。

 そのノキアの最新機種であるX02NKは、オープンなインターネットサービスへの対応で、日本市場の新たな携帯ニーズを獲得しようとしている。こちらも詳しくはレビュー記事に譲るが(参照記事)、X02NKではmixiやブログ、Youtube、Google、ポッドキャストへの対応などに力が注がれており、キャリアの独自サービスやコンテンツに“囲い込まれない世界”を構築。その上で、X02NK側でそれらのサービスが利用しやすいように独自のUIを構築している。例えば、mixiの利用では、カメラで撮影した写真をワンボタンで、自動サイズ変更した上で投稿できる。

 また、X02NKでは、PC連携を重視して付属ソフトにもこだわっている。その代表が「Nokia Photos」で、これは高性能なカメラ機能を持つX02NKで撮影した写真を簡単にPCで保存・管理するものだ。記者会見では実際のデモンストレーションも行われたが、その高機能ぶりやUIの分かりやすさは、アップルの「iPhoto」に通じるものがあった。Nokia Photosからブログへ直接アップロードすることも可能であり、ここでも“オープンなインターネットサービスとの連携”が実現している。

 もう1つ筆者が注目したのが、X02NKがデジタル家電とPCの連携規格である「DLNA (Digital Living Network Alliance)」や「UPnP(Universal Plug and Play)」にも対応していたことだ。発表会ではソニーのPS3とX02NKがDLNAで連携し、X02NKに保存された写真や動画をPS3上から操作・閲覧するデモンストレーションが行われたが、その連携はとてもスムーズかつ簡単なものだった。

 ノキアが日本市場へアプローチする姿勢では、キャリアの独自性や日本市場の特殊性に根ざした機能やサービスへの対応には、どうしても時間がかかったり、無理な場合があった。しかし、日本の携帯電話市場の今後を俯瞰すれば、ノキアが強みとするインターネット上のオープンなサービスとの連携がさらに増える。それを求めるユーザー層も、現在のリテラシーの高いアーリーアダプターから、高感度な一般ユーザーにまで拡がるだろう。ノキア端末の基本的な部分に目を向ければ、日本語の取り扱いやフォント表示のきれいさなども、世代を経るごとに向上している。キャリアの独自性や日本の特殊性に対応しきれないことが、ノキアのような“グローバルかつオープン”なアプローチにとって、いつまでも大きな参入障壁になるとは言い切れないだろう。

海外端末メーカーにとって、日本市場の魅力とは?

 ところで、海外メーカーにとって日本市場とは、どれだけ魅力的なものなのだろうか。

 日本市場の累計契約者数は1億を突破し、昨年から導入が本格化した新たな販売モデルの影響により、買い換えサイクルの長期化も予想されている。法人市場など新興分野はあるものの、中国やインドなどBRICs市場に比べれば、端末販売台数の規模感はケタ違いに小さい。手間暇かけて、海外メーカーが日本市場にこだわる理由は何なのか。

 その答えは、インフラにある。NTTドコモを筆頭に日本のキャリアは次世代通信技術の実用化で世界をリードしており、この分野では紛れもなく「世界一の先進国」だ。特に次世代携帯電話の主力と目される3.9世代の「Super3G (LTE)」を牽引しているのはドコモであり、同社は国際標準仕様に基づいて商用化をすると公言している。またドコモへの対抗上、ソフトバンクモバイルもLTE導入を急ぐ可能性が高い。「(グローバルで見れば)日本が次世代携帯電話インフラ商用化のテストベッドになる」(海外キャリア幹部)と見る業界関係者は多い。

 「我々(LG電子)としても、日本のインフラにおける先進性はとても重視しています。ドコモのHSDPA 7.2Mbpsにいち早く対応しましたが、今後も積極的に最新技術への対応をしていきたいと考えています」(前出のLG電子 申氏)

 海外メーカーからすれば、最新の携帯電話インフラのある日本で蓄積したノウハウは、海外他地域の“次世代シフト”の段階で役立つ。さらに日本のユーザーはハイエンドモデルを好み、データ通信サービスの利用や応用性という点では、海外市場以上に活発だ。海外メーカーにとって、日本市場には市場規模以上の魅力がある。

 日本市場と海外市場の垣根は取り払われつつあり、参入障壁は急速に低くなってきた。ドコモやソフトバンクモバイルを筆頭に、キャリア自身も“グローバル市場との連動”を強く意識し、そちらに舵を切り始めている。

 「日本はケータイ鎖国」「海外メーカーの参入は難しい」――それは今日の現実かもしれないが、ひとたび目が覚めれば吹き飛ぶ、脆い幻想なのかもしれない。

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