若い世代を熱くさせる、5つの仕掛けとは?――串焼きチェーン「くふ楽」福原裕一氏(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(2/4 ページ)

» 2008年07月05日 01時04分 公開
[嶋田淑之,ITmedia]

 ここからは、上記のシステム/プロセス特性について、もう少し具体的に見ていこう。KUURAKUグループでは、どのように若い世代を熱くさせる仕掛けを作っているのか? そのポイントは5つある、と筆者は見ている。

ポイント1:基本は「人間性善説」

 システム/プロセスを構築するに当たっては、経営トップの人間観が非常に大きな影響を及ぼす。人間性悪説に立脚する場合、リーダーシップは、上司・部下の命令服従関係の行使を基本とし、組織形態もピラミッド型となる。そこでの機能単位は、階層構造の中の各部門である。大企業でも、ワンマン経営者が恐怖政治を敷いているような企業を想像すれば分かりやすい。

 それに対して、人間性善説に立脚する場合は、人間性に対する信頼と期待がベースになっているだけあり、リーダーシップのあり方は、“仕事仲間に対するサポート”というスタイルを取る。これは、まさに福原氏の人間観そのものである。「経営の主役は『現場』です。私はそのサポートをすれば良いのです」(福原氏)

 ここから帰結する組織形態は、フラット(鍋蓋)型であり、機能単位はチームである。KUURAKUグループでも、正社員1名程度とアルバイト6〜7人程度の各店舗を、1つのチームとして機能させているほか、店舗内に複数のチームを設定している。そして、この極小チームが自立・自律・自己完結型で機能することで、同社は、環境変化の大波も乗り越えてこられたといえる。

 チームの機能を極大化するために福原氏が採った方法とは、経営理念の伝播・共有化促進、現場情報の全社的共有化、裁量権の意図的拡大を通じた自己啓発促進である。

ポイント2:経営理念を全社で共有

 経営理念の全社的共有化は、あらゆる企業にとって必須の要件だが、実際にそれに成功しているところは極めてまれだ。

 以前、本連載で取り上げた製薬業界の場合もそうだった(参照記事)。高い志をもった若い人々が経営理念に魅了されて入社しても、営業の現場でそんなものは見向きもされない。ただひたすら数字だけを要求され、多くの社員が仕事の意義を見失い、うつうつとした日々を過ごしていた。

 →私たち「男芸者」って呼ばれてました!――知られざるMRの世界(前編後編

 そうした企業の特徴は、経営理念が毛筆で書かれ、立派な額縁に入れられて、社長室に掲示されていたり、朝礼に際して、空念仏のように職場全員で唱和したりする点にある。要は、社内外に向けてのポーズのようなものであり、そもそも機能させようという意志が乏しい。経営理念が機能しないとは、すなわち、嵐の海で船が羅針盤もなく航海を続けるようなもの。その末路は明らかだろう。

 我が国の多くの企業がこのような状況にある中、KUURAKUグループでは、Learning、Living、Leisureという3つのL、すなわち、共に学び、共に過ごし、共に遊ぶことを、社内的に日々実践する中で、経営理念の全社的共有を進めているのである。

 この3つのLは、本連載の中で取り上げたコンファレンス・コーディネーターの田中慎吾氏が(参照記事)、“人をときめかせ創造性を高める重要なファクター”として挙げていたものである。

 →極上の会議&研修体験、請け負います――コンファレンスコーディネーター・田中慎吾氏(前編後編

 これを推進するため、同社には、実に多数の全社イベントが用意されている。入社直後の富士山研修、改善活動の発表会チャレンジシップアワーズ、アルバイトの卒業式、運動会誕生日企画などなど、平均すると月1ペースくらいで存在するのである。

ポイント3:現場情報を全社的に共有する

 チームの機能を極大化させるために福原氏が採った2つ目の方法は、現場情報の全社的共有化である。

 KUURAKUグループでは、イントラネットをフル活用することで、それを実現している。同社のイントラネットは、各店舗のその日一日の動きがまさに一目瞭然で分かるようになっている。よくあるような数字や連絡事項の羅列というレベルのものではなく、たとえば店長からアルバイトA君への感謝の念など、一人ひとりのスタッフの性格特性や、その時どきの想いまで汲み取れるようなレベルのものになっているのである。

KUURAKUグループのイントラネット。各店舗、各チーム、各スタッフの動きが手に取るように分かる

 「私は、各店舗に顔を出すことはほとんどありませんが、毎日イントラネットを見ることで、各店舗の状況をつぶさに知ることが出来ます。ですから、たとえば、全アルバイトの顔と名前、その特性まで把握しているんですよ」と福原氏。

 このことは、見方を変えれば、社員であれアルバイトであれ、自分や自分のチームが今、社内でどんな位置づけになっているかを知ることが出来るということである。貢献できているという実感も、そして、いっそうの努力を要するという実感も。

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