クルマ通勤はもう古い!?  男性向けハイテク自転車最新事情神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)

» 2008年08月01日 15時22分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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ブリヂストンサイクルも男性向け電動アシスト自転車

 男性向け電動アシスト付き自転車に乗り出すのは、ヤマハ発動機だけではない。7月23日、ブリヂストンサイクルが「活動的な男性向けの高機能スポーツ電気自転車」(ブリヂストンサイクル)として、新モデル「RealStream(リアルストリーム)」を発表。8月8日から全国販売を開始する。ブリヂストンサイクルでは、RealStreamにより、これまで50代以上の男女と、子育て年代の30代が中心だった電動アシスト付き自転車の市場を、「20〜30代の男性市場にも広げ、市場全体を拡大していく」(ブリヂストンサイクル広報部)という。

 RealStream(リアルストリーム)の心臓部は、PAS Braceと同じ「S.P.E.C.8(Shift Position Electric Control 8)」。基本スペックもすべて同じだ。それもそのはずで、このS.P.E.C.8はヤマハ発動機が開発・供給しており、ブリヂストンサイクルはそれを採用した格好である。

ブリヂストンサイクルのRealStream(リアルストリーム、出典:ブリヂストンサイクル)

 ヤマハ発動機は自動車市場向けビジネスでは、独自に自動車用エンジンを開発・製造し、自動車メーカーに供給してきた過去がある。例えば、トヨタやフォード、最近ではボルボなどの一部車種にヤマハ製エンジンが採用されている。電動アシスト付き自転車でも同様に、自社モデルへの搭載だけでなく、他社とも協業する形でパワートレーンの提供を行うようだ。

RealStreamのシフトポジションセンサー(左)、内装8段変速(インター8、右、出典:ブリヂストンサイクル)

 今回の男性向け電動アシスト付き自転車の開発・製造にあたっては、ヤマハ発動機とブリヂストンサイクルは協業体制を取っており、PAS BraceとRealStreamの共通項は多い。電動アシスト付き自転車開発の老舗であるヤマハと、自転車の車体開発力や販売力で優れるブリヂストンサイクルが共同で、「電動アシスト付き自転車で、新たな市場開拓をしていきたい」(ブリヂストンサイクル広報部)という。

都市部の“自転車インフラ”拡充も検討すべき時期

 電動アシスト付き自転車の市場全体を見れば、主に高齢者や女性がメーンターゲットだった昨年まででも、4年連続で10%以上の伸びというペースで急拡大している。多くのモデルが10万円前後という価格帯なので、電動アシスト付きのハイテク自転車は、モビリティが多様化する中で注目ジャンルの1つといってもいいだろう。

 このほかにも、自転車市場全体に目を向ければ、「電動アシスト付き」以外にも、通勤用や健康志向の高まりによって、高品質で付加価値の高いモデルや、ファッション性の高いモデルが売れる状況になっている。例えば、ポルシェ、BMW、プジョーなど欧州の高級自動車メーカーは、自転車も製造・販売しており、日本でも人気が高まっている。実は筆者の友人も、今年、クルマを買わずに80万円を超えるポルシェの自転車を購入した。ここまで高価でなくとも、都市生活者を中心に「自転車に乗ること」は、賢い移動手段の選択になりつつある。

 しかしその一方で、日本の都市交通インフラは“自転車向け”の設計思想が皆無に近い。欧州の交通先進国では、都市の自転車専用道路が充実し、専用の駐輪設備なども用意されている。歩行者が最優先、次に大切に扱われるのがクリーンで静かな自転車という位置付けだ。それに対して、東京をはじめ日本の各都市は、今でも前世紀的な「クルマ優先」の交通インフラになっている。

 男性向けハイテク自転車の登場など、自転車市場は多様化し、ユーザーニーズも拡大している。特に都市部や都市近郊を中心に、クルマ通勤から自転車通勤へのシフトが進めば、それは環境負荷軽減だけでなく、人々の健康増進にも役立つだろう。ガソリン高や健康意識の高まりなどもあり自転車が脚光を浴びる中で、都市部や都市近郊の交通インフラも自転車向けに使いやすく再整備するべきだろう。高付加価値な自転車市場の拡大と、それにあわせた交通インフラの近代化改修が行われれば、“自転車”は新たなモビリティの1つとして成長する。それを取りまく周辺サービスが新たなビジネスに結びつく可能性もありそうだ。

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