第9回 ファイナンスの応用(4)保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください(1/3 ページ)

» 2008年08月07日 00時00分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.

 →第8回 ファイナンスの応用(3)からの続き

 事業部では、「在庫を圧縮しろ」「リードタイムを短くしろ」「ジャストインタイムを徹底しろ」ということがよく言われます。これらはどれも在庫量を減らすことを目指すものですが、在庫を持ちすぎることはその分現金が減っていることを意味します。だからこそ、会社は口酸っぱくそういうことを言って在庫量を最低限におさえようとするのです。

 また、支払い条件に関して非常に厳しく対応している会社もあるでしょう。それも会社の現金量を最大化するための政策です。一般社員としては、「1日ぐらい支払いや入金が遅れても問題ないじゃないか」と思いますが、会社にとってはこの1日が大問題になるのです。

 私も一度そういう場面に直面したことがありました。

 取引先に大金を入金することになっていましたが、こちらの社内手続きが遅く、入金が1日遅れそうな局面があったのです。当時まだ新人だった私は「1日ぐらいいいじゃん」と思っていましたが、社内は大騒ぎになりました。

 お金は1日でも銀行に預けておくと利子がつきます。1日遅れる、ということはその利子を取り逃がすことであり、クライアントにとっては損害です。その額が大きければなおさらです。

 そもそもいくら事業の状態が悪くなっても現金さえ持っていれば倒産を避けることができるので、現金に関して「1日のズレぐらい」という感覚で経営にあたっていると、早晩痛い目に遭うことになります。

個人に当てはめて考えると分かりやすい

 ここまでがキャッシュフロー計算書の基本的な考え方ですが、個人の場合に当てはめて整理してみましょう。

 お金を増やそうと思ったら、日々の自分の保有するお金の増減の理由を把握する必要があります。そのために、お金の増減を3つのタイプに分けて、どこにお金が増えない原因があるのかを突き止めます。

 私たちは日々働いて給料を受け取ります。月額30万円と仮定すれば、毎月30万円が銀行口座に入金されます。これが営業活動によるキャッシュフローに該当します。

 そして、毎月の給料の一部を株式投資に充てているとしましょう。株式投資で売却益や配当が発生した場合、それは保有現金の増加を意味します。これが投資活動によるキャッシュフローに該当します。株式投資に失敗して売却損が発生する場合は、投資活動によるキャッシュフローがマイナスになります。ほかにはローンを組むと手元の現金は増えます。これが財務活動によるキャッシュフローになります。逆にローンを返済していくとお金が減るので、その場合は財務活動によるキャッシュフローがマイナスになります。

 何が営業活動で、何が投資活動でという区分けが重要なわけではありません。学校の試験であれば「このキャッシュフロー項目は営業活動のものか、投資活動のものか選択せよ」といった質問が出るかもしれませんが、そういったことは本質的には重要ではありません。重要なのは、キャッシュフローの概念を貸借対照表や損益計算書との関係から理解することです。

 一連のキャッシュの動きを把握しないことには、ある日突然現金がショートする、という事態に直面します。

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