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» 2008年08月07日 17時54分 公開

郷好文の“うふふ”マーケティング:カセットをリワインドすると、2つの“カイコ”が聴こえる (2/2)

[郷好文,Business Media 誠]
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カセットの中身を取り出したい人に

 メモリーの詰まったカセットに穴を開けたり2つに割たっりする前に、中身を取り出しておきたいと思う人は多い。某大手レコード会社の取締役も「私もまだたくさんカセットを持っています」と話していた。アナログ磁気テープのカセットをデジタル録音する2つのデバイスを紹介しよう。

ION Audioの『Tape2PC USB Cassette Archiver』2万790円

 

 まずION Audioの『Tape2PC USB Cassette Archiver』。録音・再生・ダビングのできるダブルカセット・デッキから、USBケーブル1本でMacでもPCでも音楽ファイルとして保存ができる。パソコンからiPodに取り込み、またCD-Rにして保存もできる。

『Plusdeck 2c PC Cassette Deck』89ドル99セント(約9800円)

 

 『Plusdeck 2c PC Cassette Deck』はPCの5インチベイに設置する、昔のカーステレオっぽいデザイン。これもカセットテープを取り込んでMP3やWAVに変換できるデバイス。カセットにオートリバース機構が備わっているのも親切だ。デスクトップPCで夜な夜な“カシャッ、ジーッ”と音楽メモリーの再インストールができる。

ノスタルジービジネスの2つのカイコ

 カセットテープビジネスにまつわるもの、それは“ノスタルジー”。USBスティックは昔の恋の音楽物語、カセットウォレットは音楽文化のアイコン、そしてカセットのデジタル化デッキは、昔の音楽体験をリワインドして「ボクって誰?」の原点探しをいざなう。

 だだUSBスティックやカセットウォレットは、今どきのクリエイティブであるのに、アナ/デジ転換はどこかセンチメンタルが匂う。どちらもノスタルジーだが狙いが違う。ノスタルジービジネスには“2つのカイコ”があるのだ。それは“回顧と懐古”である。

 回顧とは自分の体験を振り返り、出発点を忘れまいとする欲求。自分探しをしたい消費者がターゲットになる。それに対して懐古とは、昔のモノや出来事を知り、共感し、新しい価値を付加したい欲求。昭和や大正を新しく感じる“昔リメイク”が好きな消費者がターゲットである。

 回顧ビジネス例:私の履歴書(日本経済新聞)、回顧録出版、大学再入学、PlusDeck 2c、Tape 2 PCなど

 懐古ビジネス例:紙ジャケットCD、映画リメイク、和柄、USB Stick、カセットウォレットなど

 回顧ビジネスでは、時代背景や史実を忠実にリスペクトし、懐古ビジネスでは今どきの視点から大胆にクリエイトする。ノスタルジーの商品化はこの2つを明確に切り分ける必要がある。

回顧すべきであって、悔恨すべきではない

 カセットにちなんで、ソニー「ウォークマン」の誕生秘話を思い出した。カセットケースを2つ重ねて「このサイズの携帯音楽プレーヤーを作ろう」という逸話だ。ウォークマンという文化はそこから生まれた。

 フィリップスが1962年に開発し、互換性を条件に基本特許の無償公開をしたからこそ、カセットは世界中に浸透し、ついに文化アイコンになった。今、音楽媒体の規格争いばかり考える日本の産業界には、カセットを文化にした“ビジネスメモリー”はないようだ。一方iPhoneのソフトウエア規格を無償公開したAppleにはそれがある。優れたビジネスメモリーはいつも回顧すべきである。

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