星野は「パネル分析用組み合わせ表」と「調査用パネル」という絵を書いた(図)。
星野 この組み合せ表は一定のルールで書かれています。横は条件項目を、ここでは7つの項目を入れましたが、縦には評価する8種類の商品案を示しています。各条件項目は2つのレベルから選ぶようになっていて、例えば包装ではビンと紙パックのいずれかになります。それぞれの条件項目をよく見てもらうと分かりますが、8種類の商品案にそれぞれ同じものが4回ずつ出てきます。
誠 本当だ。でも全く同じ条件を組み合わせた商品案はないんですね。
星野 そこがこの表の特徴なんですよ。この7条件を組み合わせた商品案を絵で描くと、右側の8パターンできます。この絵を調査用パネルまたはコンジョイントカードと呼びます。これらが条件を組み合せた代表的なパターンになるので、消費者に見せて評価してもらうのです。
誠 ということは、調査するメンバーは8枚の絵だけを用意すればいいわけですね。確かにこれなら準備に手間もお金もかからないかも……。
星野 このパネルを調査対象となる消費者の方々に見てもらって、どれがいいかを1番から8番まで順位を付けてもらいます。ただし、ここからの分析はPCの統計処理ソフトを使って行うことになります。そして、この分析結果から、7つの項目のどの条件がお客様にとってより重要で、その条件のどちらのレベル(例えばビンか、紙パックか)が望ましいかを定量的に判断できるのです。
誠 ちなみに表の組み合わせは、必ず7条件で8枚のパネルでなくてはダメなんですか?
星野 そんなことはありません。条件数もパネル数もある程度自由に変えられますが、どのように変えれば良いのかは、もっとよく理解してからでないと大変な目にあいますよ。おそらく最初はとっつきにくいし、遠回りだと思うかもしれませんが、結果的に皆さんが得る情報量は個別撃破方式で時間をかけた場合とは比べ物にならないほど充実しているはずです。次回のチーム討議には私も参加するので、皆さんと一緒に調査用パネルを設計して、消費者調査の実行計画を作ってみましょう。
誠 なんだか、かなり複雑な分析方法だけど話に付いていけるかなあ……。でも山口さんや浜崎さんがいるからうまくハマりそうだな、きっと。そうそう、メンバーには宿題のキャンセルを連絡しておかなきゃ。絶対にひんしゅくを買うけど、これもリーダーの悲しい務めだしなあ。
不安はあったが、それでも2日前に東山に呼ばれたときの悲壮感と比べればうそのように誠の気持ちは楽になった。誠はあらためてホワイトボードを見上げ、パネル分析の説明をよく読み返したのだった。(第7話に続く)
プロジェクト活動が佳境に入ってくると、チームメンバーは作業量が増えることによって予定以上の時間を費やすようになります。また周囲との調整が増えることで、精神的負担も増してきます。
こうした状況下でリーダーが無頓着に作業分担をしてしまうと、メンバーが疲弊して、著しく士気が低下してしまいます。プロジェクトオーナーやリーダーは、メンバーの時間的負荷とメンタル面のバランスを配慮するとともに、時には上司や外部の力を借りて政治的解決を図ることも必要になります。
ジェネックスパートナーズ取締役会長。ゼネラル・エレクトリック(GE)で、シックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルト(専従リーダー)として参加後、経営コンサルタントに転身。
2002年11月、お客様とともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から、お客様の成果実現のために企業変革を支援し、事業価値向上に貢献するプロフェッショナルファーム「ジェネックスパートナーズ」を設立。日本企業再生を目指して、企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』などがあり、中国、韓国、台湾等でも翻訳出版されている。
「誠」世代が“自立する=自ら考え正しく行動できる”ことが、今後の日本経済を支えるといっても過言ではありません。社会に出たビジネスパーソンとして自立するためのきっかけは誰にでも必ずありますから、そのチャンスに果敢にチャレンジしてほしいと思います。
しかしその際、気合と根性だけでは徒手空拳も同然。本連載でご紹介するようなビジネスリーダーとしての心構えと基本動作を身に付けておいたほうが無難でしょう。これらは難しく考えるのではなく、実際に試してみることが大切です。
本連載の主人公・誠は、おっちょこちょいではありますが、好奇心と向上心を持ち合わせたがんばり屋です。誠のように『天は自ら助くるものを助く』の精神でプラス思考で臨んだリーダーこそが、最後にはきっと生き残るのです。
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