どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(2)東京エリア編その1近距離交通特集(3/4 ページ)

» 2008年10月10日 11時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

【12】東京8号線の延伸及び複々線化

西武池袋線複々線化・東京メトロ有楽町線延伸の概要

 西武池袋線と直通する東京メトロ有楽町線の輸送力増強を狙う計画だ。西武池袋線は石神井公園−練馬間を複々線化する。有楽町線は豊洲駅から分岐し、東陽町−住吉−押上−四ツ木−亀有−野田市へ延伸する。住吉−四ツ木間は東京11号線(半蔵門線)を共用する。また、延伸については、「第二常磐線の投資効果に影響しないように着工区間や時期を決めること」とただし書きがある。第二常磐線とは現在のつくばエクスプレスを意味する。

西武池袋線複々線化・東京メトロ有楽町線延伸の現状

複々線化により輸送力は大幅に向上した

 西武池袋線の高架化及び複々線化工事は、1971年に東京都と練馬区で都市計画決定された事項である。このうち桜台−練馬−練馬高野台間は2003年3月に完成した。この輸送力増強が地下鉄副都心線乗り入れのための増発に生かされている。

 18号答申では石神井公園までの複々線化を盛り込んでいるが、都市計画はさらに先の大泉学園までを対象とした。この区間は2007年に国土交通省から都市計画事業の認可を受け、工事が始まっている。完成予定は2014年である。2.4キロメートルの短い区間だが、急行停車駅の石神井公園駅まで複々線化されるため、各駅停車と速達列車が完全に分離できる。増発やスピードアップが大いに期待でき、西武鉄道沿線を活気付ける材料になるだろう。

池袋線複々線化区間(青線は完成、赤線は工事中)

 一方、有楽町線の延伸に関してはほとんど動きがない。構想そのものは古く、18号答申より15年前の1985年に運輸政策審議会答申第7号(以下、7号答申)に記されている。豊洲駅から分岐して北に向かい、住吉駅で半蔵門線に合流。押上駅からさらに分岐して葛飾区の四ツ木駅に至り、さらに常磐線の亀有駅に接続する構想だった。

 有楽町線の豊洲駅に未使用のホームがある。その理由は、7号答申の構想を受けて建設されたからである。あとで改造するよりは事前に対応させておこうというわけだ。同じ理由で半蔵門線の住吉駅も分岐に対応した構造となっている。

 しかし現在、有楽町線の分岐延伸については「なし」という見方が強い。すでに東京メトロ(旧・営団地下鉄)が「副都心線の開通で新線建設は終わり」と表明しているからだ。そもそも「営団」とは、戦時中の統制政策の組織であり、食料営団や住宅営団などインフラを整備するための制度だった。新規路線の開発予定がないなら、営団である必要がない。だから東京メトロにしたのである。もちろん、東京メトロが民間会社となったからといって、新線建設が禁じられるわけではない。民間企業として利益を上げるためなら新線は作られるだろう。

 ところが東京メトロのように交差する路線を多く持っている鉄道会社は、新線を作るたびにルートのショートカットが発生し、運賃収入は下がっていく。「お金をかけて新線を作ると減収を招く」という状態だ。これでは民間企業として消極的にならざるを得ない。付近の路線が危機的な混雑となり、迂回路線が必要となるまでは着手しないだろう。

 鉄道空白地帯の解決という点で見ると、日暮里・舎人ライナーのような新交通システムのほうが適しているといえそうだ。交通政策審議会が18号答申に代わる提案をするとき、見直されるのではないかと筆者は推測している。

有楽町線延伸区間

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