橋下 いいご質問ですね。中村さん、ここからはチーム全員でいくつか仮説を立てて検討してみてはいかがでしょうか? もちろんここで私がお答えしても構いませんけど、せっかく皆さんで苦労して集めたデータなんですから、ほかにももっと色々なヒントが見つかるかもしれませんよ。
坂口 でも恥ずかしながら、当社のソフトはライセンス期限が失効していて、すぐに使えないんですよ。
橋下 それなら心配要りません。このソフトメーカーのWebサイトで1カ月間無償ダウンロードができますから、それをお使いになれば何とかなりますよ。
誠 え、すごく多機能そうなソフトなのに、無料で使えるんですか? 最近はいろいろと便利なんだなあ。
橋下 この他にもいろいろな分析やグラフが簡単にできますよ。私たちが作ったオリジナルの簡易マニュアルも差し上げますので、ぜひ活用してみてください。
誠 どうもありがとうございます。さっそく今日の結果を共有して、続きは次回の定例討議のときに、みんなで検討したいと思います。
橋下の説明のおかげでパネル分析に対する不安を解消できた誠は、帰り支度をしている橋下のそばに寄っていき、声をかけた。
誠 今日はとても勉強になりました。橋下さんみたいなコンサルタントの方って、すごく仕事ができるんですね。
橋下 そんなことありません。自分に任されたことを着実にこなしているだけですよ。アイティフーズの皆さんも、立派に仕事をなさっていると思います。
誠 え、そうですか。ちなみに立ち入ったことを伺いますけど、橋下さんっておいくつですか?
橋下 今年で32歳になりました。多分、皆さんと同世代じゃないかと思いますよ。
誠 わあ、僕と同い年なんですね。コンサルタントになってどのくらいになるんですか?
橋下 ちょうど10年目です。私は大学を出てコンサルティング会社に就職したので、プロパーのコンサルタントです。そこで星野と出会って、一緒に今の会社を立ち上げました。
誠 起業した経験まであるんですね。師匠との出会いか……すごいなあ。
橋下 師匠って、星野のことですか?
誠 そうです。僕が勝手にそう呼ばせてもらっているだけですけれど。
橋下 確かに星野にはそんな雰囲気を感じますね。ええと、申し訳ありません。つい余計なおしゃべりをしてしまいました。そろそろグループ本社のチームのフォローに行かなくてはならないので、これで失礼いたします。
「自分と同い年でも、社会経験豊富な人っているんだ。僕はこの会社しか知らないけど、ほかの仕事ってどんな感じなんだろう?」――次に橋下と話す機会があったら、もっとコンサルティング業界のことを聞いてみたいと興味がわいてきた誠だった。(第11話に続く)
読者の皆さんにとって、「転職」という響きは、どのように聞こえるのでしょうか?
転職を人生の岐路と考え、とても悩んでいる方は多いのかもしれません。ただ、皆さんの希望が、職種は同じで働く会社を変わりたいという「転社」なのか、職種そのものを変えたいという「転職」なのかによって、随分とその覚悟が違ってくると思います。
その意味では、事業会社からコンサルティング業界に変わるのは、まさに転職にほかなりません。私事ながら、筆者が33歳で経営コンサルタントに転職した時には「もう後戻りはできない」と恐怖感を覚えたほどでした。大きな決断ではありましたが、しかし自分自身で決めたことだったので、どんな大変な状況でも乗り越えられる自信がついたように思います。
ジェネックスパートナーズ取締役会長。ゼネラル・エレクトリック(GE)で、シックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルト(専従リーダー)として参加後、経営コンサルタントに転身。
2002年11月、お客様とともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から、お客様の成果実現のために企業変革を支援し、事業価値向上に貢献するプロフェッショナルファーム「ジェネックスパートナーズ」を設立。日本企業再生を目指して、企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』などがあり、中国、韓国、台湾等でも翻訳出版されている。
「誠」世代が“自立する=自ら考え正しく行動できる”ことが、今後の日本経済を支えるといっても過言ではありません。社会に出たビジネスパーソンとして自立するためのきっかけは誰にでも必ずありますから、そのチャンスに果敢にチャレンジしてほしいと思います。
しかしその際、気合と根性だけでは徒手空拳も同然。本連載でご紹介するようなビジネスリーダーとしての心構えと基本動作を身に付けておいたほうが無難でしょう。これらは難しく考えるのではなく、実際に試してみることが大切です。
本連載の主人公・誠は、おっちょこちょいではありますが、好奇心と向上心を持ち合わせたがんばり屋です。誠のように『天は自ら助くるものを助く』の精神でプラス思考で臨んだリーダーこそが、最後にはきっと生き残るのです。
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