「香港の『出前一丁』はスゴイらしい」――記者がその噂を初めて聞いたのはいつのことだったか。何がどうスゴいのか分からないまま数年が過ぎてしまって今に至るのだが、今回の香港出張で、その“スゴさ”の片鱗に触れることができた。本記事では、香港における出前一丁についてご紹介したいと思う。そう、香港の出前一丁は確かにスゴかったのだ。
外国に行き、そこに住む人々の舌の趣向を知りたければ、まずはスーパーマーケットに行ってみるのが近道だ。麺好きな香港の人たちは、普段どんなインスタントラーメンを食べているのか。ある大手スーパーに行ってみた。
そのスーパーで乾麺が置かれているコーナーには、背が高い棚が全部で3列並んでいた。各国産のインスタントラーメンや日本製のカップ入りはるさめヌードルだけでなく、米線や麺線、海老麺など中国独自の乾麺もさまざま並ぶコーナーである。
棚が3列ある乾麺コーナーで、そのうちの1列分以上を「出前一丁」が埋め尽くしていたのだ! 袋麺だけでなく、カップ入りの出前一丁もあるし、サイズが小さいものや大きいもの、「生麺」と書かれたちょっと高級そうな商品などさまざまだ。
袋入り麺もよく見ると、おなじみのノーマルタイプはごく一部で、驚くほどバリエーションが豊富である。シーフード味で辛いもの、海老味らしきもの(「鮮蝦麺」とある)神戸風(なぜかテリヤキ味)、札幌風(味噌ラーメンだろうか?)、サテー味などなど……日本では見たことがないようなカラフルな出前一丁の数々に驚かされた。
驚きはそれだけでは済まなかった。おいしいと評判の粥専門店、上環の「生記粥品専家」へ、朝食を食べに行ったときのことだ。
記者は粥を注文したのだが、ふと隣にあった「精選早餐」(モーニングセット)と書かれたメニューに気が付いた。一番上に載っている「Aセット」(21香港ドル=273円)の内容は、サンドイッチに目玉焼き、そして汁麺となっている。麺は3種類から選ぶことができ、その1つは「出前一丁麺」となっていた。
こういったセットメニューは朝食以外でも楽しめる。「茶餐廳」と呼ばれる店では大抵、麺類や丼物と飲み物を組み合わせたセットメニューを用意しているが、よく見ると「麺類を出前一丁にした場合は3ドル増」などと書かれている。「3ドル高くなっても出前一丁を食べたい」という香港人が少なからずいるのかと思うと、なんとなくうれしくなってしまうから不思議だ。
朝、麺粥屋で出前一丁。午後は茶餐廳で出前一丁。「出前一丁は香港人の生活に溶け込んでいるのだなあ」と感心していたら、驚きは夜にも待っていた。
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