ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
既存の強みや過去の成功体験が、変化の激しい現代では足枷になる――。そんな危機感を持つデジタル戦略リーダーに向け、本特集では保有資産を時代に合わせて読み替える「アセットの再定義」を徹底解剖。自社のコア技術やノウハウに新たな価値を持たせる、企業の具体策を探ります。
国内の女性用下着市場をけん引してきたワコール(京都市)が、自動車産業に進出する。
化学メーカーのBASFジャパン(東京都中央区)と協業し、自社開発の立体成型技術「Melooop」(メループ)を自動車分野へ展開する。6月には同技術を活用した自動車用アームレストのコンセプトモデルを開発し、名古屋国際展示場で開催された「人とくるまのテクノロジー展2026 NAGOYA」のBASFジャパンブースで展示した。
「ワコールは『より美しく、より健康に、より快適に』を提供する企業。下着は、その価値を提供するための1つの手段でしかない」こう話すのは、ワコールの人間科学研究開発センター センター長 兼 Melooop事業準備室 開発責任者を務める清家望氏だ。
人口減少で国内の下着市場が縮小する中、ワコールは長年培ってきた技術や知見を見直し、新たな事業領域の開拓を進めている。なぜ同社は自動車業界を選んだのか。
ワコールが自動車分野への展開の核と位置付けるのが、独自の立体成型技術「Melooop」だ。
同技術はもともと、ブラジャーのカップ製造における課題を解決するために開発された。従来は縫製技術の熟練度に依存していたり、成型時に材料の廃棄が多く発生したりしていたことから、新たな製造方法を模索。2018年から不織布の製造手法の一つである「メルトブロー法」を応用した立体成形技術「Melooop」の開発に取り組み、2020年に実用化した。
Melooopは、熱で溶かした熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの樹脂を細い繊維状にし、3Dプリンタで製作した型に吹き付けて立体形状を作る。社内では、その製造工程を「綿菓子を作るようなイメージ」だと表現しているという。
特徴は、繊維を吹き付ける量を調整することで、1つの部品の中に硬い部分と柔らかい部分を作り分けられることだ。例えば、支える部分は硬く、肌が触れる部分は柔らかくするといった設計ができる。
接着剤を使わず、単一の素材だけで立体構造を作れることも特徴だ。使用後も素材を分別する必要がなく、リサイクルしやすいほか、必要な部分だけに繊維を吹き付けて成型するため、材料の無駄も少ない。
さらに、一般的な樹脂成形では金属製の金型を用いるが、Melooopでは3Dプリンタで製作した樹脂型を使用できる。このため、開発コストや開発期間の削減にもつながる。原料に染料や顔料をあらかじめ加えることで自由に着色できるため、染色工程も省略できる。
こうした特徴が、自動車業界で求められる軽量化や環境への配慮、開発期間の短縮といったニーズに合致した。
自動車分野への展開で協業するのがBASFジャパンだ。ワコールはこれまでも、Melooopを採用したブラカップの開発で、BASFジャパンの高性能熱可塑性ポリウレタン(TPU)素材「Elastollan」(エラストラン)を採用してきた。こうした関係を基盤に、両社はMelooopの新たな用途として、自動車分野への展開を進めている。
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