下着向けに開発した技術を、なぜ自動車へ応用できたのか。清家氏は「人と物の関係性を突き詰めていくことがわれわれの強み」だと話す。ワコールでは長年、女性の体形だけでなく、姿勢や動き、皮膚への圧力、着心地などを研究してきた。
これまでは、その知見を主に下着づくりに生かしてきた。しかし、人が快適に過ごせる形状や素材、身体との接触のあり方を考えるという点では、下着に限らずさまざまな製品に応用できる。対象が「下着を着る女性」であっても、「自動車のシートに座るドライバー」であっても、人と製品との関係性を設計するという考え方は共通している。
実際、ワコールはこれまでも身体に関する研究成果を他分野に応用してきた。例えば姿勢研究を生かし、ランドセルの開発に携わった実績もある。
近年は製品だけでなく、製品開発で培った技術や知見そのものを事業として展開する取り組みも進めている。
清家氏は「メーカーとして製品開発に注力しすぎていた面もあった」と話す。製品開発で培った計測技術や研究成果、データにも価値があると考え直し、それらをサービスとして提供する方向へかじを切ったという。
その一例が、3D計測サービス「SCANBE」(スキャンビー)だ。3Dボディースキャナーを用いた約3秒のセルフ計測で、自身の身体を360度確認できる3D映像や、全身20カ所の数値、体形の特徴、インナーウェアのサイズなどを知れるサービスだ。全国の一部店舗で導入している。
計測のみの利用は無料だが、骨格タイプを診断する3500円の骨格診断や、ボディーデータから「スマホ首」「猫背」などの姿勢レベルや「お疲れネコ」「ぐらぐらキリン」などの動物に例えたバランスタイプを診断する2000円の「からだバランス診断」といった有料サービスも提供している。
下着開発のために培ってきた身体計測技術を、自分の体形を可視化できるサービスとして展開した形だ。4月時点で約35万人分の計測データが蓄積されているという。
7月1日からは、スポーツジムやヘルスケア施設での利用を想定した3D計測サービス「SCANBE base」(スキャンビー ベース)の提供も開始した。3Dデータを用いて身体の形状やサイズを可視化し、日々の運動やトレーニングの成果を視覚的に確認できる。今後、スポーツ量販店や競技団体、自治体、研究機関などへの設置も視野に入れる。
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