こんな会社には注意せよ。IRという“ロードショウ”を楽しむ経営者に山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年02月19日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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 実は近年、「適時開示」の原則が強化されたおかげで、重要な情報に関しては、平等に発表しなければならなくなったので、アナリストなどによる一般投資家への情報上のアドバンテージが大いに損なわれた。かつては自分の親しい、あるいは影響下にある経営者に数字の感触を問うことで、アナリストが利益予想の修正などを実質的に早く知ることができたが、今はそれをやると経営者の側がルール違反になる。

 もちろん零細株主も含めて、株主の疑問に対して経営者は真摯(しんし)に答える必要があるし、投資家に対する早くて正直な情報伝達は重要だ。しかし、いくら大企業だからといって、IRのために多くの人員を割き、経営者の時間を随分使うというような状態はどこかおかしい。経営者が油断すると、IRのコンサルタントや自社のIR部署のスタッフに仕事を作ってやるために経営者の時間とエネルギーが使われることになってしまう。

必要以上のIRをしてはいけない

 いずれにせよ、時間や手間も含めて低コストだが早くて、かつ正確な「必要十分なIR」を経営者は自分の判断において確立する必要がある。

 一方で投資家は、表面的なIRのうまさを疑って掛かるべきだろう。申し訳ないことだが、筆者はIRに特別に熱心な会社の業績や株価については、普通の会社よりも深く疑うことにしている。はっきり言うと、プレゼン下手の会社の方が、「上がり目」が大きいことが多い。もうひとこと、言っておこう。IRミーティングで投資家とのやりとりが「経営の参考になる」などとのんきなことを言う経営者は、日頃、経営のことを十分に考えていない人物だ。

 近年、日本の上場企業経営者の報酬水準がジワリと上がっているし、自社株の割り当てやストックオプションなどのインセンティブを持っている経営者が増えてきた。彼らは、一時的ではあっても株価を上げたいかもしれないが、経営者が株式のセールスマンになるようでは困る。

 IRは必要だが、やり過ぎはむしろ良くない。

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