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Suicaのイノベーションはどこまで続くのか――JR東日本 椎橋章夫氏に聞く神尾寿の時事日想・特別編(3/4 ページ)

» 2009年03月02日 15時19分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 また、JR東日本では自社エリア内でのSuica対応駅も増やしていく。これまでは首都圏、新潟エリア、仙台エリアといった都市部中心の展開であったが、今後はローカル線対応も重要な取り組みになるという。

 「昨年発表したグループ経営ビジョン2020では、『JR東日本管轄のすべての駅をSuica対応にする』という項目を盛り込みました。費用対効果で見ますと、利用者数の少ない地域・駅でのSuica展開は難しい面もありますけれども、(Suicaの)サービスとして見ると利用できない駅があるのはお客様にとって使いにくい。ローカル線も含めた全駅対応は、JR東日本としてやらなければならないと考えています」(椎橋氏)

 むろん、過度なコスト度外視もまた問題である。そのため現在は、「ローカル路線向けの低コストな設備の検討や研究開発を行っている」(椎橋氏)という。

リーダー/ライターのみでフラップがない、簡易Suica改札機。乗降車数が少ない駅では簡易型を導入しているケースが多い(使い方はJR東日本のサイトを参照

Suicaを用いた「クルマとの連携」を強化

 Suicaを筆頭に全国各地で交通ICカードが広がる中で、昨年後半から注目分野として浮上してきたのが、パーク&ライドなど「クルマと公共交通の連携」だ。これらは従来から取り組まれていた分野ではあるが、交通ICカードのIDや履歴情報、電子マネー機能を使うことでより高度な管理を実現し、サービスとしての質向上の可能性が見えた。

 「クルマとの連携は(今後が)注目の分野ですね。電車だけで消費者の移動ニーズすべてがまかなえるわけではありませんから、(公共交通との)アクセスという面で、『駅までクルマでくる』使い方は増えるでしょう。クルマから電車に乗り換えるお客様に対しては、割引など料金的なメリットを提供したいと考えています」(椎橋氏)

 交通ICカードを用いたパーク&ライドサービスは、パーク24が中心となり、JR東日本ほか各社との協業が始まっている。まだ対応駅の数は少なく、実験的な取り組みではあるが、「(パーク&ライドの)データを見ますと、確実に利用率が増加している。電車への乗り換え効果や駅前ビジネスの活性化に繋がると見ています」(椎橋氏)

 →PASMOで割引になるコインパーキング――首都圏でパーク&ライド開始

 →PASMO/Suica+無人駐車場の可能性は?

 また、昨年後半はカーシェアリング(参照記事)にも注目が集まった。この分野も新たなクルマ利用型ビジネスとして拡大が兆しが見られるが、「具体的に話せる段階ではないが、カーシェアリングとの連携はしていきたいと考えている」(椎橋氏)という。

 「Suicaの登場によって、電車とバス、そして飛行機までが(サービスとして)連携しました。その点で、自家用車などクルマ利用も競争相手ではありません。むしろ、どのように連携し、人々の移動をシームレスにしていくかが重要になるでしょう」(椎橋氏)

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