一方、モバイルSuica以外では、電子マネーの拡大も2008年のトピックスであったと椎橋氏は述懐する。
「Suica電子マネーの動きで特徴的だったのは、タクシー各社への導入が進んだことや、駅周辺の商店街など小規模店舗への展開が行われたことです。(Suica電子マネーは)これまで駅と、駅周辺の大規模商業施設やナショナルチェーンへの集中的な展開が多かったのですが、昨年はそれが(中小規模店舗も含めて)拡散していく傾向となりました。Suica電子マネーが街に広がっていく1年だったと言えるでしょう」(椎橋氏)
Suica電子マネーの活用状況を見ても、2008年を通じて伸びたのが「PASMO加盟店」と「街ナカ加盟店」の利用件数だ。駅ナカ加盟店での利用件数も増加しているが、PASMOとの相互利用開始後の増加分である91万件/1日の大半は、JR東日本の駅ナカ以外の伸びである。イオン加盟店(約1万1900店舗、参照記事)やファミリーマート(約2800店舗、参照記事)、ミニストップ(約1680店舗、参照記事)、ららぽーと(約820店舗、参照記事)など、街ナカへのSuica電子マネーの広がりは著しく、その傾向が利用件数増加の内訳でも反映されてきている。
「今後で言いますと、ナショナルチェーンを中心に(Suica電子マネーの)『全国への展開』を希望する声が増えています。すでにJR西日本と電子マネーの相互利用をしており、この3月からはJR北海道との電子マネー相互利用も始まります。こうした(他地域各社との)相互利用のスキームで、Suica電子マネーは全国に拡大していくでしょう」(椎橋氏)
Suica/PASMO相互利用開始からこの2年、交通ICと電子マネーともにSuicaは過去7年間のうちでもめざましい成長を遂げた。Suica対応駅でのIC利用率78%弱は、他地域と人の流出入がある首都圏において、実質的には利用率100%に近い状況であると言っても過言ではないだろう。しかし、椎橋氏は「利用率は限りなく100%を目指したい。まだ(利用率を)伸ばしていきたい」と強調する。
「モバイルSuica特急券で新幹線対応は行いましたが、今後の課題として『回数券』や『企画乗車券』への対応があります。ここにも(Suicaで)対応していきたい。また、他地域での交通ICカード導入とSuicaとの相互利用がさらに広がれば、(首都圏に)流出入するユーザーのIC利用率も、もう一段高くできるでしょう」(椎橋氏)
実際、他地域での状況を取材すると、JR北海道のKitacaが開始直後から好調な立ち上がりを見せるなど(参照記事)、交通ICカードの普及と利用活性化には追い風が吹いている。九州エリアではJR九州の「SUGOCA」(参照記事)と、福岡市交通局の「はやかけん」も始まり(参照記事)、これらは来年にはSuicaと相互利用する計画だ。全国主要都市での交通ICカード導入と相互利用スキームの拡大が、結果的に首都圏の利用率向上を後押しすることになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング