千葉などで愛される「マックスコーヒー」……なぜ全国で販売するのか?それゆけ!カナモリさん(4/6 ページ)

» 2009年03月04日 07時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

 シロウトっぽく社員を登場させるといえば、静止画で社員一同が映っているだけの中古車販売店や不動産会社などのCMがおなじみだろう。しかし、それらは単に「映っているだけ」でなんの意味もない。

 一方、Z会のCMで今回社員達が果たした役割は大きい。

 通信教育会社の社員が、真偽はともかく、「私は続けられなかった」と告白するのは、顧客である受験生にとって、一気に親近感がわくのではないだろうか。「ああ、人の痛みが分かる人たちの会社なのだな」と。

 社員自ら過去(真偽はともかくとして)を告白して、「相手の痛みに触れる宣言」をしたことも大きい。「受験生サポート」は、受験産業の基本ではあるけれど、今まで以上に思い入れを持って顧客に接するだろう。社員のモチベーション向上効果もバッチリだ。

 しかし、こんなにも大胆なCMをよく作れたなと思ったが、これはウェブの動画広告としての使い方をメインにして作ったものなようだ。(もしかすると、テレビで流れたりすることがあるかもしれないけれど)。

 従来の常識、方法論を乗り越えて、売り手と買い手(この場合は受験産業の担い手と受験生)の距離感を一気に縮めてしまった感触が画面から伝わってくる。従来のマスメディア、マス広告からは考えられない凄味が、この動画から感じられる。

 自社や自業界のタブーともいえるメッセージを発し、より顧客との距離感を縮める演出をほどこし、ネット動画というメディアを使いこなす。

 CMの世界が大きく変わったということの証左を見せられた気がした。

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