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» 2009年03月23日 14時00分 公開

『らき☆すた』『true tears』に学ぶ、アニメツーリズムの可能性(5/6 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

ヒットの流れが変わっている

 最後にアニメの制作やクリエイターのプロデュースを行うファンワークスの高山晃社長が、杉並区のキャラクター「なみすけ」をプロモーションしていった事例や、富山県在住のクリエイター集団「The BERICH【ザ・ビリッチ】」をプロデュースした経験について語った。

ファンワークスの高山晃社長

高山 言いたかったことは山村先生たちに言われてしまったのですが、要約すると「(これからは)地方の時代である」ということ、「(観光振興する上で)重要なのがノリとディレクションし過ぎないこと」ということです。デジタル化できない部分が私たちのようなエージェントに重要なところであるし、プロデュースする上でも非常に重要だということです。

 私たちは3年半くらい前に会社を作りました。当時、ピクサーに代表される大規模なCGアニメーションスタジオがありました。ただ、「普通の人たちにとってのデジタル化ってなんだろう」と考えた時、「パソコンじゃないか」と思いました。「パソコンって何」と考えると、端的に言うと「コピーしたものを保存できて、発信できるもの」、乱暴に言ってしまうとそういうものではないでしょうか。それが出来ると何が良くなるかというと、「何人かでやっていることが1人でできるよ」とか「メディアを使って発信していたことが、自分たちで発信できてしまう」ということです。デジタル化の意味というのは「遠隔地でできるようになる」「個人のものが発信できるようになる」ということなのに、「米国で大きなチームでアニメを作っているから、日本も(同じことを)やろうよ」ではないのではないかと思いました。日本は漫画のような文化もあるし、個人の創作活動が盛んなので、「個人でいろんなことができるのではないか」という仮説から会社を作りました。

 個人でいろんなことができるので、究極は「クリエイターが1万人いたら、スタジオが1万できる」、つまり「自宅がスタジオになる」ということです。そうすると何が必要になるかというと、マネジメントをするとか、ブランディングを考えるとか、契約書を作るとか、個人のスタジオにはない、ややプロ的なノウハウが必要になるだろう。その辺をよろずや的に受け持てば仕事になるんじゃないのかとか、クライアントさんと話す時にやや近い方がいいよねとか、面白いの5つくらい持ってきてというニーズに応えるようなことをやろうかなということからファンワークスを設立しました。

 (これまで)ヒットの流れはテレビや映画から始まって、ネットに流れるということでした。「(最終的にネットに行き着くなら)ネットからオリジナル流せばいいのではないか」というのが私たちの中であって、「その方が効果測定がしやすいし、ユーザビリティに合わせてコンテンツのいろんな戦略を考えれる」ということでユーザーさんに参加してもらいながら、ノリと適当なオーガナイズでコンテンツをプロデュースしてきました。

ヒットの流れが変化している(出典:ファンワークス)

 私たちが最初に手掛けたのは「やわらか戦車」という作品です。それを取り上げた記事がYahoo!ニュースなどに出ると一気にブレイクして、100社くらいが「商品化したいんです」と来て、「日本のメディア芸術100選」エンターテイメント部門で1位を獲得したり(参照リンク)AMDAWARDでBest Visual Designer賞を獲得したり(参照リンク)とわけの分からない状況になってきました。個人の時代なんだよねということが示されたということですが、『らき☆すた』『true tears』のように多くの人を巻き込んでいく上でネットが上手く機能したと思っています。

やわらか戦車

 そういうところを受けて、(東京都杉並区で)「なみすけ」というキャラクターをプロデュースしました。「トトロみたいな長い目でキャラクターを育てたい」ということで始まりました。

杉並区のキャラクター「なみすけ」(出典:杉並区)

 2008年のキャラクターのトレンドは「ゆるキャラ」でした。逆に言うと「大手のキャラクター、誰もが知っている有名なキャラクターの売り上げが顕著に落ちた」ということです。そんな中、「次はどこ?」というとみんな「ゆるキャラ」「地方キャラ」と(言います)。「それは何でだろう」と思った時、ネットの力なんですね。ひこにゃんしかり、せんとくんしかり、ブログで彦根城にひこにゃん置いたよとか、ウェブで論争になるとかで注目を集めたわけです。ただ「地方キャラ」を打ち出していく中で、行政とクリエイターさんの関係などを考えた時に、一応知っていなければダメなルール、ユルいんだけど守らなければいけないルールがあるため、ファジーなディレクションが必要になってくるだろうということで、ファンワークスが杉並区さんと一緒にやることになりました。

ひこにゃん(左、出典:ひこちゃん特設サイト)、せんとくん(右、出典:平安遷都1300年祭)

 少子化対策という杉並区さんのご意向もあって、バスやランドセル、母子手帳などにはなみすけが使われるようになりました。ファンワークスではブログを作って、なみすけが「今日は高円寺の盆踊りに行きました」とか「神社の湧き水がおいしいです」といったものをユルく発信しています。そういうことをしていると、セブン-イレブンが「なみすけパン作りましょう」「なみすけグッズを杉並のセブン-イレブンで置こう」とか、ケーキ屋さんが「なみすけのケーキを作ろう」と(いう話が出てきました)。そして、NHKがニュースにしてくれたりと、やわらか戦車的な広がり方をしています。最初に杉並区さんに提案した時には「ブログ立ち上げたら多分NHKが取材に来てくれますよ」とか「Yahoo!ニュースで取り上げられますよ」とか適当なことを言って決まったのですが、その通りのことが起こっています。

The BERICH【ザ・ビリッチ】の『グレートハント』

 また、The BERICH【ザ・ビリッチ】さんとは『グレートハント』という富山弁の音楽アニメをスペースシャワーさんと協力して作りました。ビリッチは長男、次男、三男の3人のユニットで、元々カフェのホームページを作ってらっしゃったのですが、ある時アニメを作って、ファンワークスに持ち込んでこられました。それが面白くて、ネトアニで富山弁アニメを作ってメディアを回っていると、スペースシャワーさんがおもろいねと言って、富山弁の音楽アニメを作ることになったのです。そうこうしているうちにチャットモンチーさんがゲストで出てくれたり、地元メディアが面白がって取り上げてくれたり、経済産業省の観光アニメのプロジェクトにつながったりとわらしべ長者のように来ています。

 地方の講演に呼ばれると、「●●というところが文化的にどうだ」「東京と比べてどうだ」と言われるのですが、別に場所が名古屋でも種子島でもあんまり関係ないと個人的には思っています。何で富山(のコンテンツが注目されている)かというと、ピーエーワークスとビリッチがあるからくらいのことだと思います。どこでもものは作れて、ピーエーワークスさんやビリッチさんのように富山を愛している人たちがあまり気張ってやっている感じでもなく(制作している)、そこが面白いのかなと思います。

 そしてピーエーワークスさんが泣けるアニメを作り、ビリッチが笑えるアニメを作ってオープンソースで流すというようなことを経済産業省さんの方にプレゼンして、採択いただいて観光アニメを作りました。経済産業省さんは観光アニメをオープンソースで流していくというプロジェクトを22案件くらい抱えていて、春には発表することになると思います。

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