実用品から趣味のモノへ――「フォト イメージング エキスポ 2009」で感じた消費の行方郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2009年04月02日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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暮らしの中の写真使い

 2度のワークショップで身体が縮こまったので、うーんと伸びをして、改めてノーリツ綱機のブースを見渡してみた。すると、展示している「暮らしの写真」がすばらしいことに気付いた。

 写真をモビールで吊るしてゆーらゆら。手作りフレームに写真や身のまわりの品をオブジェ風に飾るのもナイス。mt(マスキングテープ)も活用している。


 miwaさん、井上さん、2人とも「デジカメの画像はプリントアウトして楽しみましょう」と語っていた。デジカメの画像は、ブログやネットアルバムにアップしておしまいとなりがち。しかし、それだけではつまらない。撮った写真をフォトブックにするのはステキだし、フォトブックをオリジナル装丁にするのはもっと楽しいことだ。プリントした画像を切り刻んで、コラージュやバッグ、ブックカバーなどにすると創造性もかきたてられる。

 たくさんのワークショップを提供していたノーリツ綱機のメッセージは「refocus[+] 暮らしと、写真と」。「撮るだけでなく、撮った後に楽しもう」ということだ。婦女子の中でも流行しつつあるというデジイチ(デジタル一眼レフカメラ)、これからはプリント画像の創作にも広がりそうだ。

感性型消費リーダーの時代

 一方、エキスポにやってきた殿方のほとんどは、かわいいコンパニオンの撮影に行列をなし、もしくは新型カメラやレンズなどのブースで物欲を炸裂させていた。愛欲と物欲オンリー、男はクリエイティブのマーケティング対象にならないのか。

 その点、自称「婦女子専門マーケッター」の私、ワークショップでは手先に集中しつつも参加する婦女子の観察に怠りない。観察の結果、2つのワークショップに参加した女子が数人いるのに気付いた。「マニアックな彼女たちこそ“感性型消費”のリーダーではないか」とふと思った。

 モノが満ち足りた日本人、実用品よりも趣味のモノ、感性型消費に移行しつつあると言われて久しい。だがそれはあくまで余裕・余暇・余技的なものにとどまり、暮らしの中の散在需要でしかない。財布のパーティションを“日常消費”と“感性型消費”とに分けると、大半は日常消費に使われ、感性型消費は1割以下。感性豊かな消費者であっても、“日常消費ときどき感性型消費”が普通と思っていた。

 しかし、感性型消費リーダーたちのモノ創りへの熱気に触れて、それは違うと感じた。クリエイティビティにあふれた人は、生活のあらゆる場面に“創造”がないと息が詰まってしまう。棚や額はもちろん、ちっぽけなフックや虫ピン、取っ手にも、自分テイストやこだわりを捨てたくない(捨てられない)。日常消費であっても、感性センサーを“ピピン”と働かせているのだ。

 彼女たちは天性ともいえる“感性の一眼レフ”を持っている。レフ板に生活の隅々を映し出し、画角を決め、シーンを“切り撮る”。撮った画像を自分の生活シーンに重ね合わせ、実際に切ったり貼ったりで壁を創り変える人が増えている。

 不況でハードウエアの売れ行きは鈍っているかもしれないが、婦女子のデジイチ感性型消費はそのブームをさらに一段上のレベルに押し上げる。楽しみ方のソフト消費市場が広がるのはこれから。感性型消費行動は、一度はまると中毒のようにやめられないのだ。え? オトコのコンパニオン撮影も、ソレなしでは生きていけない中毒症状だって? うーん……羞恥(しゅうち)心のカタマリで、お姉さんに声をかけられない私には正直よく分からん。

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