“ネットと政治”を考える(後編)――ネットユーザーが選挙でやれることとは?(8/9 ページ)

» 2009年05月05日 07時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

徳力 伊藤さんと田中さんからは何かありますか?

伊藤 選挙に関心を持つことよりも、お二人がおっしゃったように政治活動や政策にいかに関心を持ってもらうかということの方が大事だと思います。

 衆議院議員選挙が近いので、もしかすると駅の前で朝、演説をしている議員さんや、ビラを配っている議員さんがいるかもしれません。もちろんそういう地道な活動は何もしないよりは投票行動の1つになると思うのですが、そこはただそれだけではなくて、「ビラに書いてあることは何なのか」「普段、国会議員の方がどういう法律で議論をしていてどういう考え方なのか」ということを調べてもらって皆さんから発信をしていただければいいのかなと(思います)。

 選挙付近になると、いろんな比較サイトのようなものが立ち上がるんですね。ただ、選挙と選挙の間には、どうしてもそういうものはありません。構想日本ではまだまだ力不足なのですが政治家・政策データベースというものを作っていて、政策についての考え方や人となりが分かるようなアンケートを定期的に国会議員からとっています。もちろん構想日本という名前を分かっていただけていなければ回答してもらえないのですが、それ(回答のあるなし)も含めて公開しています。

 構想日本では行政の事務事業が本当に必要かどうかを議論して、一定の結論を出していこうという「事業仕分けプロジェクト」をやっています。実は今日来ていただいているお二人ともその事業仕分けの先導者です。構想日本では言っている政策が実現できるのであれば、その政党、もっと言えばその人間を応援していこうといつも思っています。事業仕分けは原則公開でやっていますので、そういうところにも注目をしていただけたらと思います。

構想日本の政治家・政策データベース

田中 先ほど参画意識という話がありましたが、声なき声を可視化するから参画意識が生まれるわけですね。声なき声を可視化して参画意識を醸成し、参画意識を持った人たちを集める場としてChange.govがあるわけですが、あそこを見ていると皆さん参画意識があって入ってきているので、1つの自浄システムが働くのか世論がブレないんですよ。

 声なき声が声になり可視化されるという仕組みは、ネットが一番持っていると思います。Change.govで文章を書く人は2%と言いましたが、残りの98%は投票することによって自分の声が可視化されたということになるんですね。それが参画意識を醸成する。

 「そういう声なき声を可視化するにはどうすればいいか」というと、それはまず発信するところからスタートしなければいけない。日本でできるかどうかは別として、オバマのケースでは4000人の専属スタッフと100万人のボランティアが動きました。彼らが何をしたかというと、まず15のインターネットコミュニティに対して、こと細かに発信したのです。まずは1つの共感の渦を作って、徐々に声なき声を可視化するプロセスに移っていくわけです。ですから、まずは呼び水のようなことをやっていく必要があるのではないでしょうか。

 僕はネットの可能性はすごくあると思っていて、仮にChange.govで起こったようにたくさんの参画意識を持った人がいる中で、バランスのとれた民意が均衡点というか最適解として表されるのであれば、民主主義の根幹が大きく変わってくるのかなと思います。

 それはどういうことかというと、今までは選ぶ人と選ばれる人が分かれているわけです。選ぶ人は4年に1回とか3年に1回しか(政治に参加する)チャンスがない。ところが今もし、いろんな英知を集めて1つの最適解というものに近付ける自浄システムをネットの中に作れるのであれば、それはある意味政治のオープンソース化(が実現できたということ)だと思います。選ぶ人と選ばれる人ではなくて、選ぶ人も選ばれる人も1つの土俵の上でいろいろなアイデアを出して、一緒に民意や政策を作りこんでいくという政治のオープンソース化みたいなものです。ネットにはそういう可能性があるのではないかと思います。

徳力 田中さんがおっしゃったChange.govのように、選挙期間中に各党が提言されているマニフェスト一覧サイトというものがあって、みんなで○×付けるのは日本では合法なのでしょうか?

河野 比例代表があるからマニフェストもダメじゃないかな。

伊藤 政策に対しての評価であれば多分いいと思います。自民党がいいか、民主党がいいかとなるとアウトになってしまいますが。

徳力 問題は深いということですね。警察が怖くて何も身動きできないという話になりそうです。

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