“ネットと政治”を考える(後編)――ネットユーザーが選挙でやれることとは?(7/9 ページ)

» 2009年05月05日 07時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

ネットユーザーが政治でやれることとは?

アジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦社長

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク社長) 会場からいただいた質問をかぶせさせてください。2007年の東京都知事選挙ではある候補者の映像がYouTubeでアップされたことがありました。また、米国大統領選挙ではアップルのコマーシャルを真似てヒラリーを悪役にした動画を誰かがアップして500万回以上再生されました。日本ではこういう活動をすると、全部NGなのでしょうか?

伊藤 まさにグレーな部分だと思うのですが、この間の参議院議員選挙の時には政権放送がYouTubeにアップされて、結果的に投票日まで削除されなかったのですが、その後総務省が「これについてはダメだ」という勧告をしたというのが事実になります。その「勧告した」という事実に基づけば、YouTubeやニコニコ動画にアップすると選挙が特定されて、候補者も特定されて、政見放送というのは投票依頼をしますので、「3要素が重なったということでダメだ」という見解になったと思います。

徳力 ヒラリーの動画の場合は、アップルのコマーシャルを参考にして、第3者がパロディとしてやっています。誰かよく分からない人がオバマを持ち上げて、ヒラリーを批判している雰囲気で、選挙のことは別に言っていないのですがそれでもダメでしょうか?

鈴木 黒です。候補者が出ているものを選挙期間中に更新したらアウト。

徳力 オバマガールとか候補者出てないものはどうなるんですか?

鈴木 オバマという名前を言っているからダメ。

徳力 なるほど、類推させてはダメ。結局我々は選挙期間中に何もやってはいけないということでしょうか?

鈴木 そうです。

河野 要するに「選挙期間中使っていいものでないものは全部ダメ」というのが今の公職選挙法なので、たすきやちょうちんはいいけど、こういうのは文書図画違反というのが今の公職選挙法です。

 現実論として、選挙期間中に2ちゃんねるに多分書き込みされたりすると思うのですが、誰が書いているか分からないし、しかもサーバーが海外にあったりして野放しになるということはあるのではないでしょうか?

伊藤 2ちゃんねるは一応、警察庁が取締りをしています。ただ、まったく当たり前のことですが追い付かない。

徳力 例えば選挙期間の1日前に、さっきのようなパロディ動画を山ほど作ってアップすれば大丈夫なのでしょうか?

伊藤 ダメです。公職選挙法は混乱するものなのですが、さっき言ったように「特定の選挙名」「特定の候補者名」「投票依頼」の3つは選挙期間中以外はダメです。ただ選挙期間中であっても、それをやるためのツールは限られている。限られた枚数のビラであったり、電話であったり、通りでたまたま出会ったりするのはいいけど戸別訪問はダメとかそういうことになります。

徳力 ネットに絡んだ選挙活動で我々がやっていいこと、もしくは議員の方からするとやってほしいことって何かありますか?

河野 選挙期間の12日間はグレーだったり黒だったりして気分が悪いかもしれませんが、普段はOKなので、最初に戻ってしまいますが普段から情報を発信していただければそれが一番ありがたいです。12日間だけの情報というよりは、半年とか1年の情報を得て、有権者は動くんだと思いますから。

 定期的でも不定期でも政治家のことをいいとか悪いとか裏取りして言ってくれたり、「こういう政策が大事だ」みたいなことを書いていただいたりすれば、12日間どうこうというよりはそっちの方がはるかにインパクトがあるのではないかと僕は思います。

鈴木 (河野さんの)おっしゃる通りで、(選挙期間外でも)「誰に投票しよう」「誰を落とそう」と書くとまずいのですが、「誰がこういう政策を言っている」「誰が頑張っている」とか(書いていただきたい)。皆さんそれぞれ関心があるテーマや、生活する上で直面するテーマがあると思うのですが、それだけでいいので。

 河野さんのホームページでも僕のホームページでも、見ればいろんな情報が載っていますから、いろんな所から(情報を)入手してきて、ここはいいとか悪いとか書いていただくことを皆さんに繰り返していただくことが重要です。

 それと「生活をしていく中で、政策にいろんな所でぶつかるんだ」ということを体験していただいて、そのことをシェアしていただけるととてもありがたいです。出産の時、子どもが熱を出した時、子どもが小学校入った時、いくらでもあります。政治のダーティなイメージはすぐには消えないと思いますが、「政策というのは大事だよ」ということを伝えていただきたい。「じゃあ政策を変えるにはどうしたらいいか。やっぱり最後は選挙だよね」と気付いていただければと思います。

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