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» 2009年05月28日 07時10分 UPDATE

JAniCAシンポジウム2009:20代アニメーターの平均月収は10万円以下――アニメ産業が抱える問題点とは? (4/7)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

20代の年収は100万円強

――今回の調査で現れたもう1つの特徴として、「20代の新人が非常に厳しい環境に置かれているのではないか」ということがあります。神村さん、この結果をどのようにご覧になっていますか?

神村 このシンポジウムで一番言いたかったのはここで、20代、入ってきて数年の人たちの年収は100万円です。100万円で東京で暮らせると思いますか? 無理なんですね。新人から数年の人たちにとってはアニメーターという仕事がすでに職業として成り立っていないんです。こういう状況で(業界に)入ってくれているわけですから、この人たちのところは早急に業界全体で何とかしたいです。

――この点についてJAniCA会員のヤマサキ(オサム)から発言をいただきたいと思います。

ah_h6.jpg ヤマサキオサム氏

ヤマサキ 私は専門学校の講師をやっていて、15年くらい卒業生を出しています。(制作の)デジタル化が進み始めた10年くらい前から制作会社をやられているところだと分かると思うのですが、新人を入れる時にフィルタリングをしているんですね。ほとんどの会社が「親元から通えるか」「親から仕送りはあるか」という条件付きでアニメーターの新人を入れています。そこでフィルタリングするため、優秀な人材が排除されている(可能性がある)という現実があると僕は思います。

 それを何とかくぐり抜けて入ってきた新人たちに出来高制でお金を払った時、2〜3年やっている動画の新人も平均月産枚数は500枚くらいなので、単価を200円に設定されると月給10万円になります。それから源泉を引かれて手取りが8万円以下になってしまうと、はっきり言って生活できないという現状があります。親の仕送りなどが要求されるわけですが、賢い人間はそこでほとんど辞めます。ゲーム会社などに行っている学生時代の友達の月給が20〜30万円、普通に稼いでいる状況を知ってしまっている彼らは、力のある人間からこの業界を辞めていくんです。

 その現実を経営者側がまったく分かっていなくて、「俺たちのころは月に1000枚やっていたんだ」みたいな論法で、「500枚しかできない彼らが悪い」というような話をよくされます。ところがデジタル化以降、かつて僕らがアナログでやっていた時より、非常にレベルの高い作業内容が求められていて、ラフで一発描きで動画を描くなんてことが許されないんです。

 そういうことで新人の動画マンの月産500枚くらいというのは「よく頑張ってやっているな」という実感があります。それを共通認識として、経営側に何とか考えていただきたいなと思います。単価が300円くらいにまでなれば、月産500枚で月給15万円くらいになるので、これくらいは最低賃金として単価設定を考え直していただきたいと思います。

神村 新人の時だけは、やはり固定給で雇ってもらいたいです。社員にしづらいというのは分かるので、1年契約でもいいと思います。動画の時給を見て、同じ業界関係者として皆さんたぶん涙でにじんで見えないくらいだと思うのですが、ここは何とかしましょうと思います。

ah_h16.jpg 生産性と時間単価

竹内 うちは何とかしていたんです、本当に。今も(単価を)底上げしているのですが、前は固定給だったんです。そうすると何が起こるかというと、固定給の間はうちにいるんだけど、その後、例えば1〜2年で原画になれなかった(ランクアップできなかった)となると、よそ(の会社)が「君来いよ、原画描かせてやるよ」と言うわけです。そうすると、辞めて向こうに行くわけです。あるいは、うちで固定給の間はいいんだけど、そうではなくなるとよそに行ってしまうわけです。これは俺にとってみれば、アニメーターもそれから誘う会社もモラルないよ。そのつらさは分かりますよね。

神村 引き抜きについては業界全体でルールが必要だと思います。

――調査にご協力いただいた早稲田大学の境(真良)先生にひと言いただきたいのですが。

ah_h7.jpg 早稲田大学の境真良氏

 「(賃金が)ほかの産業に比べて高いか安いか」という議論は、僕はあまり建設的な議論ではないと思っています。産業ですから「今ある状況の中でどうやって生きていくか」(を考えることが大事)、そして短期の調整をすると同時に、クリエイティブ産業というのは人材の産業なので、人材がうまく回るシステムをどう維持するかということを長期的な課題として解決しなければいけません。そうした中で、今指摘があったように「若年層をどういう風に抱え込んでいくか」というのはすごく大事な問題だと僕は思っています。

 そういう意味で単価の議論というのは僕は残ると思うのですが、最低賃金法という法律は雇用しないと意味がないので、フリーランスが基本になるような産業では適用されません。別に法律を作る必要はなく、業界の中でしっかり申し合わせをすればいいのかもしれませんが、いずれにせよ、個別の企業の努力だけではなく、業界全体としてこれを問題にしなければいけないという点はあると思います。

 基本的にお金の問題というものは、発注側から変わってくる問題です。テレビ番組を作らせるテレビ局さん、あるいはスポンサーサイドから来る問題なので、普通にやっているとそっちの状況で話は決まってきます。

 アニメを作っているスタッフの方々は「好きだからやっている」ということがあるのですが、こういう市場では賃金によって能力帯が分散しません。そうすると、どうしても無理をした人の配置になってくるのですが、それは結局長期的には失敗しやすいと考えるべきです。

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