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» 2009年05月28日 07時10分 公開

JAniCAシンポジウム2009:20代アニメーターの平均月収は10万円以下――アニメ産業が抱える問題点とは? (6/7)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

デジタル化による明暗

司会を務めたJAniCA監査理事の桶田大介氏

――先ほどからスケジュールの破たんによって無駄なコストが生まれているという話がありました。今回の調査の自由記述欄で最も多かったのは、給料よりもスケジュールの問題でした。スケジュールの破たんという問題についてアニメーター側はどうとらえていらっしゃいますか?

神村 スケジュールの破たんは、多分アニメーターと演出が作ってきたんです。ですから、私たちも十分反省しなければならないのですが、デジタル化によって私たちの作画のパートだけは非常に不利益をこうむりました。特に動画の人たちは、今までのように動きなどに力を入れる以上に、仕上げで色を塗るためのソフトウエアに対応する手間をかなりかけるようになって、そのせいで数割、生産能力が落ちたと思っています。

ヤマサキ すごくショッキングなことを言うと、同じ会社のフロアの中で、20数年キャリアがある非常に有名な作画監督が仕事をして月20〜30万円しか稼いでない横で、業界に入って2〜3年の新人が仕上げで2000枚近く生産して、単価ベースで計算されて月40〜50万円稼いでいる現実がいろんな会社であると思います。

 これは「デジタルの恩恵を受けているのだから、当然いいだろう」というような話にはならないのではないかと思います。制作会社の予算配分をされているプロデューサーの方は、作画監督や監督に仕事として非常にレベルの高いものを要求しておきながら、金額的に払っているものはそれとは釣り合っていないので、それでOKだと言える人がいったいどれくらいいるのか(疑問です)。僕はその辺のことを予算配分をされている方々に、現実のところを聞いてほしいなと思います。

 もう1つ、先ほどの動画の話に触れさせていただくと、動画マンが優秀な原画マンや作画監督、デザイナーや監督に育っていくんです。アニメ業界を支える卵になる人たちに優秀な人材を入れない状況を作っていること、ここは業界全体で考え直していただきたいと切に思います。

――限られた制作予算の中における配分の問題が提起されたわけですが、実際予算配分を行われる立場に立たれている竹内さんはどうご覧になりますか?

竹内 「デジタル化によって原画、動画の部分が不利益をこうむっている」とありましたが、今、結果としてはそういう風に思われていると考えます。

 うちは日本で初めて、15年くらい前にデジタル仕上げを導入しました。デジタル仕上げを入れたときに何を目標としたかというと、データの共有とか、新しい表現とかいろんなことを求めましたが、やはり効率化ということも求めました。

 その当時のコンピュータは遅かったので、1日で100枚塗るのはかなり大変でした。だから仕上げの人間は泣きながらやっていましたが、それでもそれ(効率化)は実現できるようになったんです。ほかの会社はどうか知らないですが、昔、手で塗っていた時には1日30〜50枚くらい、それが今は1日で150〜250枚くらい塗れると思います。

 うちの中では単価配分を変えていて、仕上げ1枚の単価を落としています。それでも仕上げが文句言わないのはたくさん枚数を塗ることによって、しっかりとした給料をもらえているからです。それで、その部分(仕上げの単価を落として浮いた分)を動画や原画の方に回しているんです。今、動画の方もデジタル化してきていて、そこで何が起こるかというと動画がデジタルで描くと、その部分に関しては仕上げのスキルがいらないんです。すると単純に言うと、これは公に仕上げの方からお金を分捕れるわけです。

 だけど、実際は既得権益ではないですが、今ある単価を変えるというのは難しいです。申し訳ないですが、単純に単価を上げてくれと言われても、テレビ局があり、映画会社があるという時に単純に単価を上乗せしてとは言えないんです。だから、そこはまた難しい話という結論になってしまうのですが、(そこは業界全体で)考えましょうよということです。

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