ハワイ伝統の秘法「ホ・オポノポノ」は幸せを呼ぶか?――イハレアカラ・ヒューレン博士嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(3/4 ページ)

» 2009年06月06日 07時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

「引き寄せの法則」との整合性は?

 しかし、筆者にはいくつかの点で理解しにくい部分があった。世界的によく知られ、広く実践されている成功法則に「引き寄せの法則」がある。ポジティブでハッピーなイメージを抱き続けることで、それは自然に引き寄せられ、ハッピーな出来事が次々に起こるとされ、逆にネガティブでアンハッピーなイメージを抱いていると、それをさらに増幅するような不快な出来事が次々に発生するとされている。日常生活の中で、比較的よく経験することであり、この手のノウハウ物を好まない人にも受け入れられやすい内容である。

 ところが、ホ・オポノポノでは、ネガティブなイメージはもとよりポジティブなイメージも持ってはいけない、「クリーニング」を通じて、あくまでも自分の心をゼロの状態にしておくことが必要となっている。

 この点において、「引き寄せの法則」と「ホ・オポノポノ」とは対立していると考えられる。ホ・オポノポノで人生を好転させた人々がいる一方、それとは真逆の考え方の「引き寄せの法則」で人生を好転させた人々も存在する、という事実をどのように受け止め、理解したらよいのだろうか?

 ヒューレン博士の答えは、「(他の法則について)発言できる立場にはありませんが、ホ・オポノポノの考え方の中には『引き寄せ』は存在しません」という控え目なものだった。

 これをあえて「理解」しようと試みるならば、引き寄せの法則とは、人間の可能性に限りない信頼を寄せようとする米国型の成功哲学にもとづき、時としてエゴや煩悩に見えるものであったとしても、とにかく「夢」「ビジョン」を手繰り寄せようというチャレンジであろう。

 それとは逆に、ホ・オポノポノとは、それが本人のそれまで望んでいたことか否かによらず、徹底して煩悩や執着を捨てて、「自分本来のあるべき人生」を実現することこそが真の幸福である、という実践哲学なのであろう。

「人生の成功者」たちの見解をどうとらえる?

 筆者は仕事柄、いわゆる「人生の成功者」を取材する機会を多く持ってきたが、そういう人々の中には社会的に成功し、地位・名誉・富を得ながら、同時にプライベートでも心豊かに暮らしている魅力的な人々が確かに存在している。

 そうした人々に、彼らのような素敵な人生を歩む秘けつを聞くと、ほぼ全員から以下のような同じ答えが返ってくる。

 「仕事でもプライベートでも、自分が他人から理不尽な仕打ちを受けた時に、その相手に腹を立てたり、恨んだりしてはいけない。そうしたネガティブな感情を抱くのではなく、『自分に一体何を学ばせたくて、こういう不愉快な出来事が自分に降りかかったのだろう? ひょっとしたら、自分自身も知らないうちに、これと同じことを他人に対して行ってしまっているから、それに気付かせるために、こうした出来事が自分の身に起きたのか?』と振り返り、その出来事が自分に伝えようとしている『メッセージ』を正しく受け取って、それをその後の人生に生かすことが大切だ」

 しかし、ホ・オポノポノでは、このような場合、不快で理不尽な事件から教訓を得ようとするのではなく、そうした「過去の記憶」を消去することの必要性を説いている。「人生の成功者」たちの生き方とは逆であり、我々はこの差異をどう理解したらよいのだろうか?

 ヒューレン博士の答えは、「ホ・オポノポノにおいて、過去の情報は消去の対象です」というものであった。筆者の印象では、「人生の成功者」たちが語る成功の美学は、どちらかと言えば、既述の「引き寄せの法則」に近い、米国型のポジティブなイメージを大切にする哲学のように感じる。そういう意味で、目指している方向性(=「人生の成功や幸せ」の意味)が、そもそも違うということなのだろう。

 それを裏付けるように、インタビューの後半でヒューレン博士は筆者に次のようなことを述べた。「私は、あなたがこれまでに出会った最も魅力的なビジネスリーダーよりも、私の日本でのセミナーに参加した1人のお婆さんの方が好きです」と。そのお婆さんは、過酷な境遇にありながらも、筆者のように多くの質問をヒューレン博士にぶつけたり(筆者はもちろん、それが仕事だからそうしているのだが……)、理屈を唱えたりすることはなく、“ただひたすら”ホ・オポノポノを実践して、セミナー会場の満場の喝采を浴びていたとのことである。

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