ハワイ伝統の秘法「ホ・オポノポノ」は幸せを呼ぶか?――イハレアカラ・ヒューレン博士嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(4/4 ページ)

» 2009年06月06日 07時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
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仏教の「因縁」(カルマ)をどうとらえるか?

 米国型の成功法則の数々とは目指す方向性が異なるホ・オポノポノであるが、「物事に対する執着を断ちなさい」と説くその思想は仏教的であり、ヒューレン博士の発言や著作の中にもその関係性・共通性は明白に表れている。しかし、そうすると筆者には大変分かりにくい部分が出てくる。それは「因縁(カルマ)」をどう捉えるか、という問題だ。

 筆者は以前、仏教の有力宗派のしかるべき立場の人物から次のような趣旨のことを言われた。「あなたのこれまでの人生が公私にわたって過酷を極めてきたのは、あなたが、あなたの先祖の因縁を背負って生まれ、それをこの世で清算することを運命づけられているからです」。

 人は誰しも、程度の差こそあれ、何らかの因縁(カルマ)を背負って生まれ、その影響の下に人生を送るものだという。しかし、ホ・オポノポノではそうした過去の記憶は「すべて消去すべきもの」としている。とするならば、仏教との共通性を明確に表明しているホ・オポノポノではあるが、この点において両者の考え方は対立するのではないか。「因縁」というものを、どのように扱えばよいのだろうか?

 「あなたにそう言ったという僧侶が、どういう意味合いでカルマという言葉を使ったかが分からないので何とも言えませんが、少なくともホ・オポノポノにおいては情報は消去すべきものです」と、ヒューレン博士はほかのすべての質問に対するのと同様に、ごく控え目にホ・オポノポノの考え方を述べるにとどまった。

 ホ・オポノポノには仏教と共通する部分があるので、日本人には比較的近付きやすい面があることは確かだろう。しかし、そもそもホ・オポノポノは、ハワイ古来の伝統的な技法として唯一無二の存在なのであって、仏教からの類推でその全体像をとらえようとするのは、当然のことながらムリがあるということなのかもしれない。

本当にそんなに簡単なのか――ホ・オポノポノ体験記

 筆者がホ・オポノポノと出会ったのは2008年秋である。『ハワイに伝わる癒しの秘法 みんなが幸せになるホ・オポノポノ』(櫻庭雅文、徳間書店)というヒューレン博士を取材した書籍が発売された時、私がハワイ好きであることを知る友人が同書を紹介してくれたのだ。

 そして、その内容にいたく共感した私は、直ちに「ホ・オポノポノ」を毎日、実践した。仕事面でもプライベートでも悩みを抱えていた筆者としては「人生に明るい兆しがもたらされるかもしれない」という淡い期待があった。

 しかし、残念ながら事態が好転することはなかった。それどころか、年明けには体調をすっかり崩して、家で寝ている日も多くなった。基本的には4つの言葉を唱えるだけのシンプルな技法であるはずのホ・オポノポノであるが、筆者のやり方に問題があったのか、それとも、そもそもご縁のない技法であったのか、その効果を自覚できるような状況には一切ならなかったのである。

 世の中には「シンプルなことほど難しいものはない」ということも多々存在する。毎日料理を作っている筆者から見れば、日本料理など良い例だ。そういう意味で、ホ・オポノポノは簡単なようでいて、実は非常に難しいのではないだろうか? 一切の執着を断ちなさいという教え自体、仏教の僧侶が長期間に及ぶ修行を重ねてもなかなか到達できない境地(=悟り)であり、そういう点から見ても難しいとは言えないだろうか? それに対して、ヒューレン博士はこう述べる。

 「ホ・オポノポノは、本を読んだだけでスッと理解できる人もいます。その一方、本をきっかけに、私のセミナーに参加することで理解できるようになる人もいます」

 そうすると、筆者も、ヒューレン博士のセミナーに参加すれば何とかなる可能性があるということなのだろうか。

ホ・オポノポノをどう受け止めるか?

 人は誰しも、時に自分の力ではどうすることもできないような状況に置かれる。そんな時、閉塞状況を打破し、人生を良い方向へと導いてくれる何らかの指針が欲しいものだ。しかし、万人にフィットする成功法則などというのは、きっと幻想に過ぎないのだろう。偶然にもそうした技法に出会えた人は幸いだ。出会えない人は、それを求めてさまよい続けることになるのかもしれない。

 ホ・オポノポノはそうした「成功法則」の1つとして、しかもその実績を学術論文などを通じて世界に示すことができる稀有な例である。しかし、少なくとも筆者には縁の薄い手法だったようだ。これはあくまでも個人的な感想ではあるが、「ホ・オポノポノといえども相手を選ぶ」と言うべきか、「フィットする人もいればそうでない人もいる」ということなのではないかと思う。

 ホ・オポノポノを支持する人々からは反駁(はんばく)されるであろうが、これが筆者の現時点での結論である。それでも本稿をお読みになり、もし興味を持たれた方がいらっしゃるならば、ヒューレン博士に取材した2冊の単行本に目を通し、実践されてみてはと思う。やり方は、既に述べたようにシンプルそのものであり、お金もほとんどかからず、日々の生活を圧迫するようなものではないのだから。それで、万一フィットするようであれば、こんな素晴らしいことはないし、効果が判然としないようならいつでも中止すればよい。

 誰にとって効果的な手法なのか?――それはやってみない限り分からない。しかし、これをきっかけに人生を好転させる人が、もし1人でも現れるならば、筆者としてはまさに望外の幸せである。

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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