厳しい不況が続き、給与も賞与もカット。いつリストラがあるか分からない。心に砂漠地帯を抱えている人が多い日本社会だから、戦うよりも脱力したい。そんな脱力ニーズはあるだろう。ライオンやヒョウなど勇ましい動物より、あざらし、らっこ、ペンギン、うさぎといったほほえましい動物が好まれる。家事万能ネコ「猫村さん」が皿を洗いながら鼻歌を歌う姿も、ゆるくてなでてあげたくなる。
でもゆるキャラ、実はゆるくない感じもする。
ドクロパンダにはこんな物語がある。ドクドク博士によって生み出された96番目の人造パンダで、ほかとは違って1匹だけドクロになってしまった。なんだか深いワケがありそうだ。考えてみればパンダは絶滅の危機と隣り合わせの生物、保護しないと死んでしまう。それなのに、いやそれだからか、世界の動物園で平和のメッセージを放ち続ける。食べものが竹というのもエコだし殺生もない。実はケナゲな孤軍奮闘ヒーローなのだ。
パンダはそのコロコロしたかわいらしさの向こう側に、重いリアリティを背負っている。背負っているものがあるから、私たちはパンダに癒やされる一方、背負う物語を共有、共感するなどしてパンダを癒やしてあげたいと思ったりもする。
キャラクターが背負っているものを“他力本願”で活用するのが、キャラクタービジネスである。
昔から保険業界ほどキャラ好きな業界はない。アメリカンファミリーの「アフラックダック」はその代表格、宮崎あおいさんとたわむれる姿は微笑ましい。「損保ジャパンダ」の上戸彩さんのかぶりものもカワイイ。保険は病気や死亡、損害の際に支払われるため、マイナスイメージが付きまとう。そのため、かわいいキャラでマイナスイメージを覆ってアピールしたいのだ。
工業デザインや商品デザインは、使い勝手や使われる環境との調和を図りつつ、何かを足したり引いたりして制作される。一方、キャラクターデザインはクライアントが背負っている何か、商品に背負わしたい何かを伝えるため、あるいはそれをボカすために制作される。
不祥事が相次ぐ中、企業は嘘つきという目で見られることも多い。だから広告メッセージは空振りするし、企業ロゴデザインは見向きもされなくなった。だからキャラクターが背負っている物語を活用して、消費者とコミュニケーションをはかりたい。これがキャラクタービジネスが膨張する理由だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング