「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。
本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。
「マラサダ」というハワイのソウルフードをご存じだろうか。
フワッとした食感の、砂糖をまぶした揚げパンのようなものであり、食べてみると、甘すぎず、油っぽすぎず、後を引く味である。中高年の方々にとっては、昔の小学校の給食に出た揚げパンを思い出す味であり、それを知らない若い世代にとっては、新食感のスイーツといった感じで新鮮味を感じるという。
揚げたてのフワフワした柔らかさと砂糖のサクサク感を楽しめるマラサダ――。またコーヒーとよく合うため、「何個でも食べられそう」といった人も多いかもしれない。
このマラサダ……ポルトガルの家庭菓子が移民により伝えられたといわれているが、現在ではハワイを代表する菓子となっている。日本人のハワイリピーターなら、1度や2度は、オアフ島ワイキキ郊外の「レナーズ」のマラサダを口にしているだろう(ちなみに筆者も大ファンである)。
それがこの春、ハワイ島の寂れた街を舞台にした映画『ホノカア・ボーイ』で取り上げられたことから、そうしたハワイフリークだけでなく、広く多くの人々から注目されるようになったのである。
そして、このマラサダにおける日本の第一人者が、今回ご紹介する神谷亮廣さん(34歳)だ。
神谷さんの人生はまさに波乱万丈(後編に詳述予定)。ある衝撃的な体験を通じてハワイに魅せられ、やがてマイカーを改造したワゴンでの移動販売を中心に、日本でマラサダを販売するようになり、地道に市場を開拓してきた。
それゆえ、今回のブームが終焉(しゅうえん)したとしても、神谷さんの築いた市場がある限り、日本人のライフスタイルの中に占めるマラサダの位置は確固たるものがあるだろうとすら言われている。
もちろん、味は絶品。例えば本場ハワイ出身の力士からも「日本でもこんなおいしいマラサダが食べられるとは!」と絶賛されている。
ハワイアンなファッションで登場した神谷さんは、にこやかにこう語る。
「ある格闘家から『ハワイにもこんなおいしいマラサダはない。一緒にハワイでマラサダビジネスをやらないか?』って、誘われたこともあるんです」と。
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