さて言い換えと例え話です。
「逆に言うとさぁ……」、一時期流行ったこの言い回し。本人は話を分かりやすくするために、言い換えているつもりが多いかと思いますが、人によっては「逆に」話が分かりにくくなってしまうこともあるようです。いや、そっちの方が多いかも。
「それって例えば●●が▲▲した感じ?」「って言うかぁ、××じゃネ」なんてフレーズも多いようですが、意味が分かる時と「ン?」と思う時があります。下手な言い換えは相手を混乱させます。でもつい余計なことを言ってしまうんですよね、癖で。
上手な例え話ができたとき、始めて相手は腹落ちするのではないでしょうか。徳川家康の名言「人の一生は重荷を負ふて遠き道をゆくがごとし……」、格言「能ある鷹は爪を隠す」、これらは大人なら誰でも理解できる古典的例えですね。
「部長、私の時だけ厳しいですよね……ぶつぶつ」と女子社員が言ったとしましょう。「それは期待値が高いのよ」とフォローする同僚。言い換えの達人です。論理的になぜ厳しいかをくどくど説明するより、この一言の方が「上司の愛情」を的確に伝えている気がします。
暴走気味の部下を諭す時、「君の場合、モチベーションは高くて素晴らしいのだが、目標を見間違えてしまう時があるね、ガソリンは満タンでも行き先を間違えると目的地に着く前にガス欠になってしまうよね。だからカーナビで現在地と目的地を常に確認しようね。ま、カーナビの代わりに上司がいると思ってよ」なんて例えを使ったという話も聞いたことがあります。
難しいのは、相手の生きている世界(常識)を理解し、それに合わせた例え話ができるかです。もし相手に車の知識が無ければ前出の例えはピンとこないでしょう。
さて、もっと高度な言い換え(例え話)があります。車つながりで恐縮ですが、車を買い替えたいなと思い、ディーラーに行ったと仮定してください。営業マンが「この車は燃費がいいですよ」と言ったとします。普通ならそれはガソリン代が安くて済むと喜びますよね。でも私の友人は小金持ちだったので心の中で「別に関係ないけど」と思ったらしいです。
できる営業マンはその反応を察知して次の一手を仕掛けます。「お客様は平日お忙しそうですね」「そうなんですよ、お昼を抜かすこともあってね」「燃費がいいと、ガソリンを入れる回数も減りますし、時間がない方には好評です。週1回給油していたお客さまが2週に1回になった例もあります」
「こいつやるなぁ」と友人は思ったらしいです。自分のメリットになるように燃費がいい事実を言い換えてくれたので、ちょっと心が動いたらしいです。
スマートな言い換えをするには広範囲な知識と、相手の立場・背景・ニーズを理解する能力が必要です。そして大きな落とし穴。それは自分が知っていることは相手も知っていると思い込んでしまうことです。
1000の言葉より、1のイメージ。相手にとって分かりやすい例え・言い換えができると楽ですよね。相手も自分も。(横井真人)
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