水素で走る究極のエコカー、ホンダ「FCXクラリティ」に乗ってみた(前編)神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)

» 2009年09月30日 14時33分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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気持ちのいい加速感が魅力。運動性能も優れる

 それではFCXクラリティに乗り込んでみよう。

FCXクラリティの運転席

 FCXクラリティの運転席に座り、始動ボタンを押すと、V Flow FCスタックが起動。数秒で発進準備が整う。ガソリンエンジンのような振動はないが、少し高周波のノイズは存在する。EVのようにまったく無音からのスタートではなく、これがFCXクラリティの息吹というわけだ。

起動時(左)、スタンバイ(右)

READY TO DRIVE(左)、走行中(右)

 シフト操作は電子スイッチ式で、メーターパネルの左上に小さなハンドル状のものが用意されている。軽く手前に引きながら押し込み、下側に押し込むとドライブ、上側に押し込むとリバースだ。パーキングポジションは別のボタンとして用意されており、操作イメージとしてはプリウスのシフトに近い。

シフト操作は電子スイッチ式で行う

 走り出しは、モーターで走るクルマらしく「スムーズ」のひと言につきる。モーター音とともに滑るように加速し、アクセルの動きにあわせて必要なトルクがふわっと出てくる。まるで魔法のじゅうたんのような加速感は、トランスミッションの存在しないモーター車ならではの気持ちよさである。

 青山一丁目の本田技研工業本社から一般道に入り、クルマの流れに乗ってもまったくギクシャクすることはない。都内の道路のようにストップ&ゴーが多いシチュエーションだと、トルクが大きくて加速がすばやいモーター車の強みでゆったりとスムーズに流れに合わせて走ることができる。

 首都高に入ると、さらに加速をかけることになるが、その際もバッテリーの電力をサポートに使い、十分な加速力を得ることができる。とりわけ中速域から高速域での加速は力強く、エコカーとは思えないペースで高速道路の流れに乗ることができる。また横浜に向かう湾岸線では直線道路での高速安定性を試したが、直進性と安定性どちらも優れていた。速度域が時速100キロに近づくとモーターの加速感が薄れるが、それでも息切れするようなトルクの落ち込みはない。日本の制限速度下で走るかぎり、スピードやトルクに不足感を覚えることはないだろう。

 そして、もう1つ特筆すべきが、FCXクラリティの運動性能の良さだ。同車は重量物であるFCスタックをセンタートンネルに縦置きにし、その後ろにリチウムイオンバッテリーと水素タンクを搭載。前輪を駆動するモーターと合わせて、重量物が前後にバランスよく搭載されている。

 そのため少し速めのペースで曲がり角を曲がるといった場面でも狙ったとおりのラインを走り、重心移動の遅れや揺り戻しなど違和感を感じるような動きがほとんどない。絶対的なスピードやパフォーマンスや、スポーツカーのような人車一体感はさすがにないが、できのいいスポーティセダンのような運動性能なのだ。ひと言でいえば“気持ちよく走れる”。エコカーというと走りで我慢させられるというイメージがあるが、そういった感覚がないのもFCXクラリティの魅力である。

 →水素充填を初体験。究極のエコカー、ホンダ「FCXクラリティ」に乗ってみた (後編)

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