フランス王妃と塀の中の囚人が愛したお菓子男子スイーツ部(4/5 ページ)

» 2009年10月22日 10時00分 公開
[ter,男子スイーツ部]
男子スイーツ部

塀の中で食べる「アルフォート」

 マリー・アントワネットは逃げたところで映画が終了しましたが、今度は「捕まっちゃった人」の食べるお菓子について紹介します。作品名は『刑務所の中』。そのままズバリな感じです。作者の花輪和一氏が、趣味のサバイバルゲーム熱が高じるあまり、銃刀法違反(実弾の撃てる改造銃を製作、所持していた)により刑務所に送られていた間の、刑務所の中で起こるさまざまな出来事を描いたマンガで、山崎努主演で映画化もされています。

 さまざまな出来事といっても基本的に“塀の中”なので、普通の世間であるようなドラマチックなことは起きません。刑務所での日常を淡々と描いているだけなのですが、センスオブワンダーがあふれていて、とても興味深く楽しめる作品です。

 刑務所では日頃楽しいことがあまりないためか、食べ物に関することが異常に細かく描かれています。やっぱり人間は食べることが一番の楽しみなんでしょうね。そんな作品中に実名で登場するお菓子が、ブルボンの「アルフォート」です。コンビニなどで売っていますので、ご存知の方が多いとは思いますが、全粒粉のクラッカーの上にチョコレートがかかっていて、表面に帆船の絵が描かれているお菓子です。

ブルボンの「アルフォート」。こんな感じのお菓子です

 私自身、結構な頻度で購入して食べていて、美味しいとは思うものの、いまひとつメジャーになりきれない感のあるアルフォート。作品中では、「免業日(仕事を行なわない日)」に模範囚だけが参加できる月に一度のイベント「映画鑑賞会」の際に、コーラと一緒に供される夢のようなお菓子として描かれています。

 普段娯楽を得られない塀の中で暮らしている彼らにとって、映画鑑賞会は檻の外(といっても敷地内の講堂ですが)に出ることができて、「映画」「甘い飲み物」「お菓子」すべてが楽しめる一大イベント。その破壊力たるや絶大です。普段制約のない私たちから見ると、いまひとつピンとこないのですが、作中でのリアリティは相当なものがあります。

 作品中で登場したアルフォートのスイートセレクション(中サイズの袋入り)を求めて探し回ったところ、近所の西友に売っていましたので、そこで購入しました。もちろんコーラと一緒です。

「くぅー、こたえられねえな」

 さすがに私が塀の中まで行くわけにいきませんので、今回は自宅で『キッズ・リターン』を観ながら、1枚1枚ゆっくりと味わいながら食べて幸せをかみしめることにしました。アルフォートとコーラだと甘すぎないか? と、食べる前は思ったのですが、2時間かけてゆっくり味わいながら食べると、意外にもちょうどいい感じです。映画鑑賞の際に食べるものの選択肢に、次からこの「塀の中セット」も加えることにしましょう。

 作品中では、アルフォートの他にも、 「祝日には袋菓子が支給される」「正月前後は甘いものを含め、食事がいっぱい出されて幸せなひとときを送れる」「月に6回パン食があって、甘いものが出てくると最高」といった、甘いものに関する話がいろいろ出てきます。次のページでは、それらの中から作者の花輪氏が半月も前から待ち望んだという食事のメニューを紹介します。

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