本場スイスで初めてヨーデルCDを発売した日本人歌手――北川桜さん(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(2/7 ページ)

» 2009年11月21日 06時30分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

“人を幸せにすること”がミッション

ヨーデル歌手、北川桜さん

 スイスを中心に、オーストリアやドイツで長年研鑽(けんさん)を積み、活動している北川さんだが、コンサート、ライブ活動の中心は日本に置いている。活動内容は、大きく分けると2つある。

 「1つ目は、ビアホールなどで行うドイツ・ヨーデル・ライブです。ドイツのミュンヘンを中心にバイエルン州で毎年秋に開催される『オクトーバーフェスト』(ビールを飲み、ソーセージをかじりながら、観客がヨーデル歌手&バンドと一体化して盛り上がる毎年恒例のお祭り)をイメージしていただけば分かりやすいと思います。嶋田さんに見ていただいたライブもこれですね。

 もう1つは、ホールなどで行う、アルプスの生活を伝えるコンサートです。お話を交えながら、クーグロッケン、アルプホルンなどの楽しい民俗楽器が登場します。比率としては、こうしたコンサートの方がずっと多いですね」

 日本では「ヨーデル」とひとくくりにされがちだが、ドイツ、オーストリア、スイスではそれぞれ、ヨーデルのタイプや、その存在意義が大きく異なる。

 「もともとヨーデルは、牛の鳴き声をまねて自然への畏怖や祈りを表現したのが起源とされるほか、アルプスの牧場で牧童たちが牛を呼ぶときの声としての実用目的があったとも言われます。

 やがて、オーストリアのチロル地方でヨーデルを『歌』として歌うようになり、バンドを組んで、各地でライブをやって人気を博すようになったんです。南ドイツでは、そうしたヨーデルのライブが、ドイツならではのビール文化や陽気なバイエルン気質と結びつき、あちこちにあるビアホールで、お客さんたちが皆で乾杯し、歌いながら飲みながら楽しむというスタイルになっていきました。

 スイスでは、チロルのヨーデルバンドに影響されつつも、自分たちならではの文化を掘り起こそうと、『スイス連邦ヨーデル連盟』を1910年に組織しました。音楽的な傾向としては、オーストリアと同様、厳しい自然を背景に、家族や親しい仲間たちと屋内で歌う“おらが谷の賛歌”として発展していきました。ただスイスの場合は、“我々に王様はいない”という直接民主制の伝統を踏まえた内容になっている点が注目されます。主語が“I”じゃなくて“We”なんですね」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.