IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。
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1人乗りで安全・エコな次世代の乗り物。パーソナルモビリティへの注目が高まっている。
この分野の嚆矢(こうし)は米国の発明家ディーン・ケーメンらが発明した「セグウェイ」であるが、その後、トヨタやホンダ、スズキなどが相次いでコンセプトモデルを発表。特にトヨタとホンダは、人が移動する際の1人当たりのエネルギー消費を抑制し、新たな移動ニーズに応える乗り物として、その開発に戦略的に取り組んできた。
そのホンダが11月18日、最新のパーソナルモビリティ「U3-X」の報道関係者向け試乗会を実施。筆者もそこに参加し、この“新たな乗り物”であるU3-Xに試乗する機会を得た。パーソナルモビリティとはどのような乗り物なのか。今回の時事日想は特別編としてレポートしたい。
試乗レポートに入る前に、U3-Xの概要を紹介しよう。
U3-Xとはホンダの二足歩行ロボット「ASIMO」でつちかったロボティクス技術を応用して開発した新たな乗り物だ。ASIMO譲りの高度なバランス制御技術と、前後左右だけでなく斜めにも移動できる「全方位駆動車輪機構 (Honda Omni Traction Drive System:HOTドライブシステム)」を搭載。身体のわずかな重心移動を察知し、搭乗者の思うがままに操れるという特徴を持っている。ハンドルやアクセルといった操縦装置はなく、身体の重心移動だけで、進行方向やスピードのコントロールが可能だ。
実際の外観については写真を見ていただくと分かりやすいが、U3-Xは駆動輪1輪に座席部が付いているというもの。小学校時代によく乗った一輪車を未来的にしたようなフォルムになっている。サイズは315ミリ(全長)×160ミリ(全幅)×650ミリ(全高)とコンパクトだが、モーターやバッテリーが入っているため、重量は開発中のモデルで10キロ弱とやや重い。フル充電の走行可能時間は1時間だという。
U3-Xに乗る時は座席部分にしっかりと腰掛けて、左右両足のふくらはぎで軽く本体部をはさみ込んで、ペダルに両足を乗せる。U3-Xには自動的に“倒れないようにする”バランス制御技術が搭載されているので、搭乗者側が特に意識しなくても転倒せずにいられる。実際に乗ってみると、U3-X自身が細かくバランスを取って自立しようとする感じがよく分かる。まさに「ロボット」に乗っている感覚である。
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