現社長である田中秀子さんが、大学を出て、同社に入社したのも、まさにハイサワーが全国レベルで飛躍しようとするその時期だった。
「実は私、幼い頃からバレエを習っていまして、高校を出たらニューヨークのバレエ学校に行くことも決まっていたんです。ところが腰を痛めてしまいまして……。趣味としてならともかく、プロとしてやってゆくのは無理と先生に言われて、バレリーナへの道を断念したんです。
そして入ったのが山脇女子短期大学の英文科でした。1982年、卒業と同時に博水社に入社し現場で実習しましたが、清涼飲料水やお酒についての基礎知識もありませんでした。それで、東京農業大学の食品醸造学科に入学し直して、一から勉強したのです」
入社後、後継者候補として修行の日々を送ること、実に四半世紀……2006年、先代(2代目)・田中専一氏は会長職に就き、田中秀子さんが博水社3代目社長に就任した。
社長就任時、すでに日本の酒文化・酒市場は、本稿冒頭でも述べたような危機的な状況にあったにもかかわらず、同社は田中秀子新社長のかじ取りの下で、善戦を続けている。その経営には、どんな秘密が隠されているのだろうか? 次回の後編では、田中秀子社長が、どのようにして次々と迫り来る危機的状況を乗り越えることに成功しているのか、その要因の一端をお聞きしてみたいと思う。
→あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(後編)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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