母国語へ訳し、文法を学ぶ勉強法は学習速度を遅くする――米Rosetta Stone CEOインタビュー(1/3 ページ)

» 2010年04月02日 08時00分 公開
[Business Media 誠]

 インターネットの一般化や、グローバル化の進行で、外国語に接する機会が増加している。TOEICの点数が昇進の条件として課せられる企業もあるなど、ビジネスパーソンにとって語学学習は避けられないテーマとなりつつある。

 かつてはテキストやグループワークを通じた語学学習が中心だったが、テクノロジーの進歩にともない、コンピュータを利用した学習法も広まりつつある。そうしたコンピュータを通じた語学学習の分野で急成長しているのが、米Rosetta Stoneだ。リーマン・ショック後の厳しい状況下でも2009年の売り上げは前年比20%増の2億5230万ドル(約227億700万円)と好調で、2009年4月にはニューヨーク証券取引所への上場も果たした。

 「The American Business Awards」の経営者部門で「Executive of the Year 2009」も受賞した同社のトム・アダムスCEOとマイク・ファルカーソン技術・研究開発担当上級副社長に語学学習のポイントやマーケットについて尋ねた。

マイク・ファルカーソン技術・研究開発担当上級副社長(左)とトム・アダムスCEO(右)

母国語に訳したり、文法を解説したりする勉強法は効果が薄い

――Rosetta Stoneではどのような語学学習法を採用しているのですか?

トム Rosetta Stoneは1992年、アレン・ストルスフスとジョン・フェアフィールドというコンピュータ科学博士によって創業され、語学学習用ソフトを開発、販売してきています。アレンがドイツに留学した時の「語学学習を変えたい」という思いがもとになって、会社が作られたということです。アレンは「語学学習する上では、学びたい言語にどっぷりとつからなければうまくいかないんだ」ということに気が付き、それを会社の一番の理念と位置付けました。ただ、アレンは残念ながら2003年に心臓発作で亡くなってしまい、その時に私がCEOとして入社し、会社のかじをとることになりました。

 Rosetta Stoneは「人々が語学学習をする上での世界観を変えたい」と主張しています。私たちの商品では、赤ちゃんが母国語を学ぶような感覚で外国語を学べるようなメソッドを採用しており、母国語に訳したり、文法を解説したりする勉強法はまったく含まれていません。大人ほど「語学学習をする上では、母国語に訳したり、文法を解説したりすることはとても役に立つ」と思いがちなのですが、実は180度反対で、それは逆に語学学習の進度を遅めてしまうことが分かっています。

 私たちは、発音を目で見て確かめられる「スピーチ解析ツール」という機能を自社開発しており、「どのように発音しているか」ということを、利用者が理解しながら進められるようにしています。語学学校でのグループレッスンや、耳で聞くだけのリスニング教材と一線を画しているのがこの部分ですね。

Rosetta Stoneの語学学習ソフト。右上が「スピーチ解析ツール」、上側がお手本の発音で、下側が利用者の発音

――語学学習のマーケットについて、どのようにご覧になっていますか?

トム (インターネットの登場などで)世界はかなりフラットになってきていますし、小さくもなってきています。その流れの中で、他国の言語を学ぶことが必要になってきているので、語学学習のマーケットはかなり拡大していると考えています。

 Rosetta Stoneが販売している「テクノロジーベースで語学を学習するソフト」は、語学学習マーケット全体の中では、まだシェアは大きくありません。しかし、私たちは先ほどお話ししたようなメソッドで語学学習をお手伝いすれば、今後、語学学校から当社の商品に変える人が増えるということで、ポテンシャルは大きいととらえています。

 全体のシェアはそれほど大きくないものの、米軍や一部の米国の大学や企業ではRosetta Stoneを採用していただいています。語学学習用ソフトを提供しているほかの企業では、Rosetta Stoneほどテクノロジーを駆使していないため、そうした法人のお客さまは弊社に助けを求めてこられているのだと思います。

 いつかは競合が出てくると考えてはいます。ただ、今は競合は気にせずに、これまでの言語学習で失敗したり、ネガティブなイメージを持っていたりする人々のお手伝いをすることにフォーカスを定めています。

 Rosetta Stoneのお客さま、特に英語学習者では語学学習で何回か失敗したものの、「もう一度頑張ろう」と新しいスタートを求めて、利用される方が多いようです。もちろん、中国語やスペイン語などでは、「新しい言語にチャレンジしたい」という前向きな思いで利用される方も多いのですが。

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