「行政主導の記者会見開放はメディアの危機」――フリー記者たちがアピール(1/4 ページ)

» 2010年04月20日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 雑誌やフリーの記者、大学教授など70人が呼び掛け人となっている「記者会見・記者室の完全開放を求める会」は4月19日、東京都千代田区の日本記者クラブで会見を開き、新聞社や通信社、テレビ局計231社に記者会見や記者室の開放を求めるアピール文を送付したと発表した。

 日本では全国の官公庁に記者クラブが配置されており、記者会見や記者室の使用は記者クラブ加盟社にほぼ限られていた。2009年9月の政権交代以来、一部の官公庁では記者会見が開放されてはいるものの、まだその動きは全体には広がっていない。

 記者会見・記者室の完全開放を求める会では、2002年に日本新聞協会が示した「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」でうたわれている「記者会見参加者をクラブの構成員に一律に限定するのは適当ではありません」「記者室を記者クラブ加盟社のみが使う理由はありません」といった内容を、現場で実行するようにアピール文で申し入れた。

 具体的には、「質問制限などを一切設けずに、記者会見への参加を開放すること」「記者室の利用を開放すること」「取材資料の提供、懇談や裁判取材における記者席確保などを保証すること」の3点を求めている。

既存メディアが実現すべきところを、権力側にやられてしまったのは残念

 記者会見・記者室の完全開放を求める会は4月から活動を始めた任意団体で、野中章弘アジアプレス・インターナショナル代表が代表世話人を務め、反貧困ネットワーク代表の宇都宮健児氏、ジャーナリストの田原総一朗氏や上杉隆氏、津田大介氏ら70人が呼び掛け人として名前をつらねている。

 会見では呼び掛け人たちの一部が登壇、日本新聞労働組合連合委員長の豊秀一氏、フリージャーナリストの岩上安身氏、『週刊金曜日』編集長の北村肇氏、ビデオニュース・ドットコム代表の神保哲生氏、ジャーナリストの寺澤有氏、経済ジャーナリストの牧野義司氏が記者クラブ問題について語った内容を詳しくお伝えする。

日本新聞労働組合連合委員長の豊秀一氏

豊秀一(日本新聞労働組合連合委員長) 新聞労連の中には新聞の研究活動を行う新聞研究部というものがあるのですが、そこで議論をして、みんなで全面開放していこうという「記者会見の全面開放宣言」を3月4日に出しました。

 新聞労連で1994年、2002年に出した提言でも、「記者会見の全面開放や記者クラブ改革を進めていこう」とうたっていたのですが、なかなか現実では進みませんでした。そうした中、2009年9月に政権交代が起きて、閣僚会見の開放などが政治主導で行われてきました。本来、私たち既存メディアが自分たちの手で実現すべきところを、監視の対象であるべき権力の側にやられてしまったというのは極めて残念なことだと思っています。

 先を越されましたが、やはり私たちの手でそういう状況を少しでも変えていかないという思いから、「記者会見の全面開放宣言」を出させていただきました。記者会見にフリーの人やWebメディアの人を入れないことで、情報の多様性が失われています。それがこの国の民主主義にとって良いことなのかというと、決してそういうことはないと思います。多様な言論や情報の流通、多様な価値観があって初めて、世の中が民主的になっていくと思います。

 また、記者クラブの閉鎖性ゆえに、「既存メディアVS.それ以外のジャーナリスト」というあたかも対立するような形になっていることも、社会にとって不幸なことではないかと思います。私たちジャーナリストは組織に属するジャーナリストであろうと、フリーのジャーナリストであろうと、1人1人が権力を監視して、多様な情報を一般の人たちに提供するという点においては同じです。記者会見を開放しながら、それぞれが切磋琢磨して、お互い連帯し合いながら良い報道をして、少しでも健全な民主主義社会になっていけばと思っています。

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