報道記者の“メモ”について、考える相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年06月03日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者 宮沢賢一郎 誤認』(双葉文庫)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。


 永田町・霞が関の記者クラブ開放問題がインターネットの各種メディアをにぎわせている。この中で「記者が政治家や官僚とのやりとりを記したオフレコメモが不正に扱われていた」などのニュースが耳目を集めているのは周知の通り。開放問題やメモの漏洩(ろうえい)問題は他稿に譲るとして、一般の読者に馴染みのないマスコミ界の「メモ」とはなにか。今回の時事日想では、業界のメモ事情に触れる。

メモの体裁と目的

 記者の仕事の1つに会見に出席して記事を書くことがある。ただ、当コラムで何度も触れたが、大勢の記者が集まる会見で本音や真相が明かされる機会はほとんどない。加えて、この場で出た発言や中身は他社と横並びになってしまう。日々「他社を出し抜け」とプレッシャーをかけられる記者にとって、会見は正直なところあまりありがたい存在ではないのだ。

 本音を探るときはどうすればいいのか。これも当コラムで触れてきたが、「記事化しない」「発言者を特定しない」などの条件の下、小数の記者が集まる「懇談」に参加する、あるいは、夜討ち朝駆けに代表されるような個別取材で生の話を得ることになる(関連記事)

 多くの場合、「オフレコ」の条件が提示される。取材される側が自身の安全を守る、あるいは、記者に正確かつ適切なメッセージを伝えたいが、ネタ元が特定されることで混乱を招く恐れがある場合などに「オフレコ」のシバリが課される。

 記者側がこれを飲めば、もちろん記事にはできない。文字通りの「オフ・ザ・レコード」となるわけだ。ただ、取材で得た成果はきちんと記者側に記録されている。この記録されたやりとりを記した書面・書類が、最近話題のメモだとお考えいただきたい。

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