報道記者の“メモ”について、考える相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年06月03日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

これがメモ

 筆者が長年記してきたメモの体裁は以下のようなものだ(内容は筆者が考え出した完全なるフィクションであることをお断りしておく)。

(例1)

『◯月△日 国際金融筋(夜回り・自宅リビング・サシ)、引用不可=テーマ米金融市場

Q.米国金融市場の混乱が収まらない。日本の出方は?

A.欧州当局とも連携を強めているが、肝心の米国に当事者意識が弱い。

Q.米国の当事者とは財務省か、それともFRBを指すのか?

A. どちらとも言えない。向こうの偉いさんの発言をチェックしていれば分かるだろ。

Q.米国の緊急金融緩和はあり得るか? 

A.今の段階では、関係部署に連絡は入っていないと聞いている。

(例2)

『△月◯日 役所総務課長(朝駆け・自宅玄関前・◯◯新聞、□◯テレビ同席) 一部引用可=金融筋での引用限定=某銀行資金繰り関係』

Q.◯△銀行、今日の短期金融市場でも資金の出し手に供給を絞られたようだが。

A.最終的には、最後の貸し手がなんとかしたじゃないか。

Q.検査でやばい案件が見つかったという観測もある。それが出し手をちゅうちょさせているのではないか?

A.俺は直接の担当じゃないし、中身自体も報告が上がってきていない。

 例示したやりとりは、直当たりした時間の長さにもよるが、A4の書面で5〜6枚、ときには20枚程度に記録される。この間、レコーダーはもちろんのこと、取材手帳を広げることさえ禁じられることが多い。取材対象者の発言の一字一句を聞き漏らすまいと、記者は必死に頭の中に言葉を刻み込み、取材が終わった瞬間にメモを起こすわけだ。

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