なぜ出版社はゴーストライターを使い続けるのか?吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2010年06月11日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」Twitterアカウント:@katigumi


 「こちらがゴーストを使わざるを得ない理由を書かないと、アンフェアだ」――。

 ここ数回、ゴーストライターについて書いたところ、主要出版社で勤務する役職者の一部から、こういう指摘を受けた。役員からも電話があり、「記事はライターの側に偏っている」といったことを言われた。

 彼らから指摘されるような意識はなかったが、ここで私の問題意識をもう一度、書いてみる。

  • 現在のビジネス書の多くは、「ゴーストライター」が書いたものである(実は、雑誌やITの記事にも「ゴーストライター」がいる。ただし、予算が少ないので編集部員が「ゴーストライター」を兼務する場合が目立つ)。
  • ライターの氏名が本の中に記載されない場合がある。これは、責任の所在をあいまいにする。さらに著作権がどこにあるのかも、分からなくなる。著者やライターの意識を高めるためにも、氏名を載せることが急務。
  • 本の裏の奥付に「編集協力」「執筆」「ライティング」などと表記し、ライターの氏名を掲載する。
  • 印税の分配は、三者(著者、編集者、ライター)のコンセンサスで決めていくべきもの。初版は、著者5:ライター5が好ましい。

 批判してきた編集者によると、私のこのような考えが「ライターの側に偏っている」ようだ。そこで、今回はある主要出版社の協力を得て、彼らがゴーストライターを使わざるを得ない背景を浮き彫りにしていきたい。

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