参院選で、民主党が惨敗したワケ藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年07月12日 08時40分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 参院選で民主党が惨敗した。連立与党で過半数を達成できないばかりか、菅首相が「目標」としていた現有議席54議席を大きく下回った。深夜に1時間遅れで記者会見を開いた菅首相は「新たなスタートラインに立った気持ちで」と語り、続投に意欲を示した。

 まあ首相というものは、その権力の大きさから本人が辞めると言わない限りは、そう簡単に辞めさせることはできないのだという。しかし思い起こせば、2007年の参院選、当時政権を担っていた自民党が惨敗したにも関わらず、安倍首相は辞任しないと表明した。そしてそれから約1カ月で、辞任表明をした。さらに福田首相は、ねじれ国会の運営に窮して政権を投げ出してしまった。そして麻生政権は、任期満了に伴う総選挙で惨敗した。

 今頃になって民主党は、2009年8月に大勝してからの国会運営をもっとていねいにやっておけばよかったと思っているのだろう。本来、政治のあり方を変えると言っていたのだから、国会運営のあり方ももっと透明にして強引なやり方をすべきではなかったはずである。それが自民党時代よりもかえって悪くなったと言われるぐらいの強引さが出た。政治改革という理想も数の驕りの前には影が薄くなるということなのだろう(それは大政党全体で理想を共有するということは極めて難しいことだからである)。

 結局のところ、菅首相がどう権力の座に固執しようが、法律が決まらない状態になれば、あるいは総辞職をするか衆議院を解散するかしなければなるまい。もともと寄り合い所帯の民主党にとって、他党との妥協は極めてやりにくいものであるはずだ。それに党運営も難しくなる。党執行部の責任問題もさることながら、小沢前幹事長のグループはどこまで菅首相批判を展開し、それがグループの勢力をどれぐらい強めるかの損得勘定を始めるだろう。9月には民主党の代表選もある。民主党が分裂する方向に向かうのか、それとも他の政党が民主党議員に対して「脱藩」の誘いをどれぐらいかけるのか、まったく目が離せない状況になるかもしれない。

参院選で納得できなかったこと

 こうした「政局」は別として、今回の参院選でどうにも納得できないことがある。菅首相もマスメディアも消費税の引き上げを「唐突に」(菅首相)言い出したことが少なくとも敗因の1つだと言う。しかし自民党のマニフェストにはもともと10%への引き上げということが書いてあるのだから、もし消費税問題が民主党離れの原因だとしたら、なぜ自民党が「改選第一党」になったのか、説明がつくまい。

 また、菅首相が「政治とカネ、普天間問題もクリアできた」と最後の日に口走ってしまったことも票を減らす原因となったはずだ。こうした問題が消費税の陰に隠れてしまってよかったという「本音」が垣間見えたような発言である。このような政治家の「逃げ」に有権者は敏感だ。

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