グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年8月6日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
日経MJ8月4日版総合小売り面に、松坂屋上野店の生き残り戦略が紹介されていた。コラムのタイトルは「売る技術 光る戦略」。「松坂屋上野店、日常使いの食品売り場」「周辺住民向けに献立提案」というサブタイトルが目に付く。
「献立提案」をしているのは、野菜ソムリエの資格を取得した同社の社員。「特別な日のごちそう」ではなく、その日に入荷した日常使いできる野菜を、「日々の献立に困る主婦」に対して手書きレシピのPOPや試食コーナー、アドバイスを通じて販売するという。
その主婦とは店舗近隣在住の中高年層であり、通常の販売形態では「食べきれない」という要望に対し、野菜1本単位で販売する。魚なら切り身一切れ、総菜も通常の半分・50グラム単位だという。ただし、価格は安くはない。百貨店らしい品揃え・品質を、顧客にピッタリな販売単位で、さらにメニュー提案や使い方のアドバイスとともに提供する。
商品の品質と価値を、少し高めの価格で受容する近隣の中高年層をターゲットとして商売をしているというのが、松坂屋上野店のデパ地下の構図だ。
記事によれば、同店、同売場の展開は、大丸松坂屋全体の戦略を実現したものであるらしい。「大丸松坂屋は昨年から画一的な店づくりを廃し、顧客や立地など個別の特性に対応することで生き残る先戦略に切り替えた」とある。そして記事は、縮小の一途をたどる百貨店の1つの解であると結んでいる。
「縮小の一途をたどる」のは、百貨店業界だけではない。日本市場のこれからを考えれば、人口の推移から容易に想像できる。
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