日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
先日、自宅に投函されたチラシを見て驚いた。
DHC元会長の吉田嘉明氏が立ち上げた総合通販「かぜとゆき」の目玉の一つだった「中国製は扱いません」という宣言が、きれいさっぱり消えていたからだ。公式Webサイトを見ても同じで、かつてはトップページの「優良メーカーの正規品のみを扱う」の隣にあった宣言も消えている。
「は? それが何?」と思う方もいるだろう。筆者がなぜ、この変化にそれほど驚いているのかを簡単に説明しよう。
吉田氏がDHC会長時代に「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人」「NHKは幹部、アナウンサー、社員のほとんどがコリアン系」などと発言し、世間に衝撃を与えたことは広く知られている。「保守のスター」を数多く輩出したCS番組を制作・配信していた「DHCシアター」のスポンサーを務めていたことでも知られている。
そんな「愛国経営者」である吉田氏が、DHC株をオリックスに売却した後、2023年に立ち上げた会社が大和心(東京都港区)で、総合通販「かぜとゆき」の運営元だ。事業が変わっても、吉田氏の“信念”は変わらない。「日本の弱体化を防ぎ、素晴らしさを守り育てるため」(公式Webサイトより)という社会的ミッションを掲げ、DHC会長時代よりもさらに踏み込んだ「愛国経営」を推進している。それを示すのが、ローンチ時に掲げられた以下の「宣言」だ。
日本と敵対している国(中国・ロシア・北朝鮮)の製品、生鮮食品およびその加工品は、一切取り扱いません
もちろん、これが愛国心の強いユーザーから支持を集めたことは言うまでもない。SNSやブログを見ると、新聞の折り込みチラシなどでこの宣言を見て興味を持ち、利用したという人もいる。
つまり、「中国製は一切扱いません」という宣言は、認知度向上や顧客獲得、さらにはブランディングにつながる、「かぜとゆき」の根幹をなすマーケティング戦略だったのである。
メディアでも取り上げられるほど大々的に掲げていた宣言が、何の説明もなく、しれっと取り下げられていることに驚いた。
では、なぜここにきて方針を転換したのか。
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