Zyngaは“無料”カフェ経営ゲームでどのように課金させているのか野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(3/3 ページ)

» 2010年08月18日 08時00分 公開
[野島美保,Business Media 誠]
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ゲームに学ぶマネタイズ手法

 フリーから有料販売を実現する方法として、「企業側のルールに顧客を巻き込む」という仮説を、筆者は考えている。ゲームアイテムのように、そもそも価格が適正なのかよく分からない新しい財がある。価格について顧客に考え込ませる負担を与えないために、企業側からその判断基準を提供するのだ。

 現代の消費者は、ネットにあふれる情報を見比べて、賢い買物をしなければならないという情報化社会のプレッシャーにさらされている。モノが少なく貧しい時代には、選択権があることが豊かさの象徴だったが、いまや選択権があることが苦痛になる。その心理的な負担がフリー経済の原因ならば、独自ルールをもって選択権を企業側に持ってくればよい。

 ゲームがマネタイズに成功しているのは、このルール化がやりやすいからである。無料プレイの意味は、品質と価格についてのルールを知ってもらうことにある。プレミアムなサービスが欲しければ金を払うという判断基準を与えるための、フリーなのである。

 今回はルール化の一例として、米国ソーシャルゲームに見られる「限界の演出」を取り上げたが、これが唯一の方法ではなく、ほかにも可能性があると考えている。この点については、また別の回で述べたい。

野島美保(のじま・みほ)

成蹊大学経済学部准教授。専門は経営情報論。1995年に東京大学経済学部卒業後、監査法人勤務を経て、東京大学大学院経済学研究科に進学。Webサービスの萌芽期にあたる院生時代、EC研究をするかたわら、夜間はオンラインゲーム世界に住みこみ、研究室の床で寝袋生活を送る。ゲーム廃人と言われたので、あくまで研究をしているフリをするため、ゲームビジネス研究を始めるも、今ではこちらが本業となり、オンラインゲームや仮想世界など、最先端のEビジネスを論じている。しかし、論文を書く前にいちいちゲームをするので、執筆が遅くなるのが難点。著書に『人はなぜ形のないものを買うのか 仮想世界のビジネスモデル』(NTT出版)。

公式Webサイト:Nojima's Web site


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