最後に残る新聞社はどこなのか上杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」(9)(3/3 ページ)

» 2010年08月30日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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作家・経済ジャーナリストの相場英雄氏

相場:例えば出版社から「菅政権のことについて書いてくれ」という話が来ても、誰に取材すればいいのか分からない。つまり、キーになる人が見えてこないんですよ。

 しかし民間企業であれば、ニオイで分かったりする。この人を抑えておけば、記事にすることができる、といった感じで。

上杉:菅さんと(官房長官の)仙谷さんに関しては、記者クラブ制度に関する理解がない。そもそも多くの政治家は、記者クラブに問題があることすら理解できていない。なぜなら政治家も一緒になって、“洗脳”されてきたから。問題がそこにある、ということすら分かっていない。

窪田:政治家になったときからスピンコントロールされているので、理解することができないんでしょうね。

上杉:官邸システムのことを一番よく分かっているのは、古川元久官房副長官ですね。彼とは記者クラブ制度のことをよく話をしていたので、完璧に理解している。しかしマスコミ担当からはずれてしまった。で、福山哲郎官房副長官が担当することになったのですが、古川さんと比較すると記者クラブの問題点を完璧に理解しているとは言いがたい。

 菅さんについては、スピンコントロールのことを言っても「はあ!?」といった感じ。彼はネットをうまく使いこなせていないし、そもそも記者クラブ問題を理解しようともしない。だから、なぜネット上で記者クラブ問題が盛り上がっているのかが分かっていない。ただ40代の枝野幸男幹事長は違う。情報公開の意味を認識し、記者クラブ制度に問題があることも分かっている。なので政治家の間にも、世代による差がものすごくありますね。

 これは政治の世界だけではなく、メディアでも同じことが言える。日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は正しいことを言っている。正しいことを言っているんだけど、それは1980年代であれば正しい、といった内容。要するに時代から遅れてしまっているのに、そういう人たちがメディア界を牛耳っていることが問題です。

 →続く

3人のプロフィール

上杉隆(うえすぎ・たかし)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年からフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。著書に『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など多数。

相場英雄(あいば・ひでお)

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。2005年に『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)など多数。

窪田順生(くぼた・まさき)

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、フライデー、朝日新聞、実話紙などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)などがある。


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