全10回でお送りする、ジャーナリスト・上杉隆氏、作家/経済ジャーナリスト・相場英雄氏、ノンフィクションライター・窪田順生氏の鼎談連載もいよいよ最終回。『ニュースステーション』でキャスターを務めていた久米宏氏に、上杉氏がある質問をした。それは……?
→政治家のフトコロから記者にカネ……メディア汚染の問題点とは(2)
→あなたはモグリの記者ですか? そう感じさせられたエライ人の論理(4)
→新聞社の立派な建物が残り、報道が消えてしまうかもしれない(6)
→大臣を逃がしている自覚がない? つまらない質問をする記者たち(7)
→「裸になる」わけではないが……江頭2:50を見習う理由 (8)
上杉:政治の世界というのは、まだまだ55年体制の古い体質が残っていて、いわば“最後の護送船団”のようなもの。
窪田:記者クラブもそうですね。最後に残った談合組織といった感じ(笑)。
そういう意味では経済界の方が、古い体質が早く消えましたね。もちろんまだまだ古い体質が残っている部分もあるかとは思いますが。
上杉:1990年代の銀行を象徴に、古いシステムが変化を余儀なくされていきました。
相場:それまで残されていた秩序が、完全に崩れました。
上杉:官僚についても、2000年からの官僚バッシングで自浄作用が働いた。ところがメディアだけは、いまだに変わらない。なぜかというと、メディアを叩くメディアがないから。やはり日本人はメディアに洗脳されすぎ。
久米宏さんは『ニュースステーション』でいろいろな問題発言をして、物議を醸していました。当時、久米さんに「意識的に問題発言をしているのですか?」と聞いたところ、「ボクは100人の視聴者がいたら、そのうちの10人が賛同してくれたら大満足」だと言っていました。つまり、残りの90人を敵に回してもいい、といったことを話していました。
そのとき「なるほど」と思いました。万人を納得させなくてもいいとなれば、自分の考えにブレがなくなるな、と。久米さんを真似して、ボクも「100人中1人が賛同してもらえれば満足」と思うようにしている(笑)。
相場・窪田:ハハハ。
上杉:いや、ひょっとしたら1人もいないかもしれない(笑)。
窪田:もし万人が賛同すれば、それはもう意見ではないですよね。
上杉:自分の意見に100人中10人が賛同してくれれば満足……と思っている人が増えればいいんですよ。そうすればいろんな意見が出てくるので、そこからベターなものを選択していけばいいだけのこと。
なので視聴者や読者に合わせる必要なんてない。ベターなものを選択できるように、視聴者や読者に情報を提供していけばいい。しかし既存メディアは「自分たちはこう思っている。だから視聴者・読者もここに当てはめよう」といった考え。しかし、こうしたメディアの考えはとても傲慢ですよね。
むしろ「自分たちはこう思っています。これに賛同してくれる一部の方は、どうぞ支持してください」というスタンスの方が健全ですよ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング